あなたの転職はなぜ失敗するのか?(1)
さて、いよいよボーナスシーズンも近づいてくる今日この頃、転職の相談が増える季節です。私自身も転職組ですが、外資系に長くいたこともあり、昔の同僚や他企業の友人・知人は転職組だらけです。
しかし、実際のところ「こんなはずじゃなかった」という話をよく聞きませんか?私は毎年のようにそんな話を聞いています。では、なぜ転職に失敗するのでしょうか?
私の身の回りの多くの転職ケースを通じてひとつ感じていることは、転職における「Give & Take」が理解されておらず、それで失敗に結びつくケースが少なくないということです。
そう、転職のときに「Take」ばかり考えている人が少なくありません。
「給料はいくらもらえるのか?」「休暇は何日あるのか?」「残業はあるのか?」「手当ては充実しているのか?」etc. 自分が何を得られるかには極めて重きを置きながら、自分がどのような価値を与えられるかはあまり考えてない。このことを話すと「職務経歴が自分の価値を判断してもらうものだ」と言われたことがありますが、経歴は過去。その経歴と募集の内容を照らし合わせて自分は将来の価値としてなにを提供できるのかを真剣に考えるべきです。「入ってみないと出せる価値はわからない」と言われたこともあります。それはある意味正しいでしょう。しかし、転職活動の中のコミュニケーションでその確度をどんどん高めることは可能です。にもかかわらず、実際に面談で質問される多くのことは条件面であって、自分の出せる価値をより理解しようとするための質問は僅少です。面談は、好条件を得るための自己アピールの場ではなく、会社も自分も双方をより正しく理解し、会社の求めるものと自分の経歴・能力の摺り合わせ、マッチングを行う場にすべきです。
前職より好条件で転職し意気揚々としていた人が半年後には「こんなはずじゃなかった」と言って次の会社を探しているケースをいくつも見てきました。
「こんなはずじゃなかった」は、まさに転職活動の段階に端を発する双方のギャップに起因しています。「Take」ばかりに気が行って、何が「Give」できるのか、そのマッチングを真剣に考えていない結末とも言えます。もし、あなたが「こんなはずじゃなかった」と言っているとすれば、会社も「こんなはずじゃなかった」と言っているケースは多いでしょう。
しかも、不幸なことに転職情報誌は転職活動をテクニック化して「Take」の意識を煽り、助長しています。テクニックを駆使すれば、自分の「Give」より「Take」をかなり大きくすることに成功するかもしれません。しかし、健全な企業であればそんなアンバランスが長続きするわけがありません。
考えてみてください。そもそも、給与は自分のアウトプットの対価です。その会社で、その仕事で、自分がどれだけの価値を出せるかということなのです。人の能力も、経験も、性格もさまざまですから、プレイするフィールド(会社、部門、職責)が違えば出せる価値も大きく違うはずです。極論すれば、前給がいくらだったとか、転職サイトで年収いくらと判断されたとかは関係ありません。フィールドと自分のマッチングが良ければ、そんな数字より飛びぬけた価値を出すこともできるでしょうし、マッチングが悪ければそんな機械的な数字の価値すら出せないこともあるわけです。
転職にあたって、選ぶべきは「より条件の良いところ」ではなく「より自分の価値の出せるところ」。そうすれば、当然そのリターンとしての報酬も高くなるでしょうし、なによりも自らの財産としての成長を得ることができるはずです。
(つづく)