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開けてしまったらあふれ出すテクノロジー。そこには希望が残っていた!

A.I. やロボットのシステム・インテグレーション

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転職して1ヶ月。前職(とその関連)の送別会とか壮行会とか歓送会とかなんだかたくさんありまして、まだ全部終わっておりませんで連休明けにもいくつか予定されています。合計70人近くと直接飲み会で送り出していただき、まだきっと飲み足りてない人もたくさんいるとは思いますが、実現できてなくて申し訳ありません。新しい環境にも少しずつ慣れ始めていて、そろそろ「新しいことを始めた」背景を話してみようかと思います。
前のエントリーでも触れましたが、私はA.I. やロボットのシステム・インテグレーションを始めました。
ここで一旦、システム・インテグレーションという言葉を思い出してみてください。
私がIBMに入社したころ=社会人になった1987年は、まだメインフレーム全盛時代でした。今ではあたりまえになったコンピューターですが、その当時「コンピューターの仕事をしている」というのを理解することさえできない人が世の中にはたくさんいました。一般の人にとってコンピューターというのは、未知のものか、高額なおもちゃ、という認識しかなかった時代です。パソコンはありましたが、ほとんどは高価なホビーでした。
その当時のメインフレームコンピューターは、一部の、おそらく企業の1%程度が導入している「とても高額な」「設備」でした。今思い返せば、当時のメインフレームコンピューターシステムは、現代の原発や旅客機みたいなものだったのです。ベンダーは少なく、日本国内ではすぐに挙げられるだけで4社でした。
メインフレームコンピューターを利用している企業では、ベンダーを1社に限っているのが一般的でした。そもそも、数十億円から数百億円と、ものすごい高額な設備でしたので、複数のベンダーから購入するなんて考えられなかったのでしょう。
1990年代に入って、UNIX系サーバーやパソコン系サーバーが増えてきて、ベンダーの数が一気に数十倍〜数百倍に増えました。ハードウェアだけでなく、ソフトウェアベンダーや、周辺機器ベンダーや、作業を行う「システム・インテグレーター」という職種が生まれました
さて、システム・インテグレーターとはいったいなんでしょう?
私の理解するかぎりでは「複数のものを統合するエンジニア集団」です。
ある工業大学の航空工学の教授が言ってました。「航空産業というのはシステム・インテグレーションなんです。機体、エンジン、翼、内装、空港設備、空港運用、なにをとっても違うテクノロジーですが、すべて合わさらないと航空システムとして機能しない。それを組み合わせるのが航空産業です。」なるほど。
現代のICTでは、コンピューター、ネットワーク、パソコン、スマフォやタブレット、IoT機器など、多くのハードウェアと、OS、ミドルウェア、WebシステムとWebアプリケーションやWebサービス、Webブラウザー、Ajaxなどのコンテンツ、などの多くのソフトウェアを複雑にからめあって一つのシステムとして成り立たせます。これがシステム・インテグレーションなわけです。メインフレーム時代は1社で「製品」として行ってきたことが、ユーザーに近いところで、既存のものと、必要に応じて、必要なものを組み合わせる、という時代に変わったわけです。
ところで、ロボットをICTの延長にある「端末」と考える人は多いと思います。ICTの端っこにロボットはいる、と。
しかし、ロボットは端末と呼ぶにはあまりにも複雑です。動力となるバッテリー、とてもたくさんの関節とアクチュエーター、それらを制御するサーボシステムやトルク制御、感圧、姿勢、温度、湿度、方向、距離、ビデオ、音声、ガスなどのセンサー、音声認識、意味解釈、記憶、発話などのソフトウェア、さらにはICTシステムとの通信を含めたバックエンド連携。ロボットカーともなれば、自動運転やら運転介入やら、さらに面倒なことが。ロボットにはロボットなりのシステム・インテグレーションがあるわけです。
現代のロボットは、1メーカーが1機種を生産する、というITで言えばメインフレーム時代。そして、これから世間に浸透していきます。これから、多くのテクノロジーベンダーが、ロボットに役立つ部品やソフトウェアを個別に出してくるでしょう。そうなると、かならずしもメーカーがインテグレーションしたロボットシステムだけでなく、ユーザーに近いところ、もしくはユーザー自身が、用途に応じて必要なロボット技術を複数組み合わせて一つのシステムにして利用していく、というスタイルが生まれる可能性が高いと私は考えています。そこで必要になるのが、「ロボットのシステム・インテグレーション」ということです。
ロボットのシステム・インテグレーションという業種は現在ありません。しかし、私は先駆けてそれを生業として仕事を始めた、と理解していただくとよいと思います。この4月からの仕事は、その第一歩であり、私の修行の始まりなのです。
IBMでICTのシステム・インテグレーションを長く経験しました。これから、ロボットの世界でその経験を活かし、人々に近いロボット産業を目指していきたいと考えています。
私は制御系の専門家ではありません。(学校ではならっていたのですが、四半世紀前のことです)このため、主にICTに近い「知識ロボット」とか「コミュニケーション・ロボット」と呼ばれる部分を主なターゲットにします。これが、A.I. という単語が前についている所以(ゆえん)です。この分野は、「音響技術」「音声認識」といった「耳」を作る技術、「言語処理」「意味解釈」「記憶」「価値観」「応答計画」といった「脳」に近い技術、「文章組み立て」「発話」といった「口」を作る技術、などがターゲットとなります。これらの技術を提供しているベンダーは、すでに国内だけでも何百とあり、組み合わせ方によっても結果が違います。性能や使い勝手にも違いがあるだけでなく、接続方法もまったく標準化されておらず、手を入れる箇所は山ほどあります。これが私がこれからチャレンジする分野となるわけです。
今の職場は、こういった技術にまみれるには最適な環境です。まだまだ始めたばかり。楽しんでいきたいと思います。
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