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小さな農家を強くするIT 〜野菜の工場、ではなく野菜の発送をよりスムーズに

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学びの場をプロデュースするopnlabでは、ITによる農業の業務改善について考える勉強会「opnlab農業後方支援プロジェクト」を2月19日に開催しました。

プロジェクトのはじまり

 

もともとは久松農園 久松達央さんのopnlab小さくて強い農業をつくる』出版セミナーの後の雑談がきっかけのプロジェクト。

 

久松さんと、セミナーに参加していたゾーホージャパンの松本暁義さんと、opnlab小林が立ち話で「農家向けのITで業務を変える勉強会をやろう、日本の農家を変える!」と盛り上がってスタートしました。農業に関心があり自ら菜園で野菜を育てる松本さんは「いろいろお役に立ちそうで面白いですねー」とテクノロジーを担当することに。「農業」のナカにいる人たちと、古くて新しいビジネスの様相に興味津々の小林が、場作りをするということになりました。

  

早速、久松さんがFacebookで関東でBtoCビジネス(個別宅配など)をしている農家に声をかけ、何名もの勉強会熱心な農家の方がFacebookのグループに集まりました。

 

そして、勉強会を開催する前に、2件の農家へヒアリングにいくことに決定。訪問先は、恐らくもともと久松さんが「この農家は、あと一押しすればもっと伸びる」と目をつけていたであろうサンバファーム三つ豆ファーム

 

ヒアリングをした後クラウドサービスを試験導入するという、課題と解決までのステップを共有していく「農家」のための業務改善プロジェクト、勉強会がスタートしたのでした。

 

BtoB農家とBtoC農家

 

2月19日は、茨城や千葉でBtoC農家を中心に17名が集まりました。勉強会では2件の農家の課題や久松農園の仕組みなどを共有。松本さんからは「データ管理のコツ」の解説があり、それぞれのプレゼン内容に対して活発に質問が飛び交いました。

久松さんは

「栽培については師匠や本で学べることが多いけれども、BtoCを手がける農家の業務改善はお手本がほとんどない」

と指摘。

 

久松農園 久松達央さん

 

例えば、卸業者を対象としたBtoB農家の場合、数品目を栽培して数社程度の取引になりますが、BtoCの個人宅配を始めると一気に数十を超える顧客管理や発送業務が発生し、数十種類もの品目を生産するので、その管理業務も増加します。そして、多くの農家は栽培・収穫の作業現場とパソコンの置いてある事務所が離れているため、事務作業が面倒になり心理的に負担を感じています。

 

また、農業をスタートする若い夫婦は、栽培を夫、事務作業を妻が担当するケースが多く、身内同士で気心が知れている分、お互いのワークフローを一歩引いて整理することは後回しになりがちです。

 

しかし、農家は一般の企業とひけをとらない、むしろそれ以上にデータを扱う業種。

例えば、販売台帳、商品データ、顧客データに加え

・栽培記録で、何をいつどのように収穫したかを記録

・栽培計画で、1年に収穫する品目を時間と植える面積で管理

・農業簿記では、一般的な業種よりも保有する資産の種類が多く、多数の生産する作物を管理します

さらに、天候データや農業用資材、肥料、土の管理などを管理してPDCAを回していきます。

 

このれらのデータ管理や業務を効率化することが、本来それぞれの農家のもつ「個」をいかすことにつながる、と久松さん。

 

小規模な農家の中では格段にIT化が進んでいる久松農園では、クラウドやアプリケーションを活用してデータ管理を行っています。長年試行錯誤しながらインフラを整えていき、「1年目の従業員でも作業ができるところまで達している」という話に、どよめきの声が参加した農家からあがります。

 

ITで業務改善して強みをいかす、楽しく働く

 

今回のプロジェクトでは、ゾーホージャパンの松本暁義さんが技術アドバイザーとして参加し、サンバファームと三つ豆ファームという2件の農家の仕組みづくりをクラウドサービスzohoで試験的にサポートします。(注)

 

まずはサンバファームに対し、納品書・請求書、宅配便の送付書などの一括印刷などができるフローで整えました。

 

サンバファーム 松下信也さん

「今回の仕組みを使うと、数日かかっていた納品書・請求書の発行、宅配の発送伝票の印刷が1日ですむので、本当に気が楽になりました」とサンバファームの松下さん。そして、「自然とサンバファームの商品の差別化や販売促進について考えるようになりました」と、自社の戦略やブランディングなど、視線が将来へと向かいます。

 

ゾーホージャパンの松本さんからは、プロジェクトを進める上での大事な共有事項として、

「サンバファームのデータは、移行しやすいものだったんですよ」

と解説。

サンバファームでは、見た目やレイアウトを意識した「人に優しいデータ」ではなく、「データベースに優しいデータ」で管理をしていました。例えば表記を統一するなど、コンピュータが理解しやすい形でエクセルにデータを管理していたのが、次のステップへスムーズに進む重要な鍵になった、と説明します。

 

松下さんの次に、これからクラウドを活用としている山木さんですが、今回のプロジェクトに参加して「すでに効果がでています」と話します。一番にあげたのは、ヒアリングされたことを通じて「仕事のフローを俯瞰的に整備できたこと」。将来従業員を増やす事を想定している三つ豆ファームにとって、仕事を渡すために、業務フローをいつかは整理しなければいけないものでした。

 

そして、「事務仕事の増加で体調を崩しがちだった妻が、このプロジェクトを通じて仕事に対して前向きになりました」と報告。その様子が、本当にうれしそう。

  

 

久松さんは、ツールを使うのが目的になったり、ツールにふりまわされるのではなく、個を際立たせた農家の「変態」をつくるために、上手にインフラを整え、利用していくことが大切だと強調しました。

 

今後の「農業後方支援プロジェクト」の予定は、2つの農家の業務改善を一定水準までもっていき、さらに会計、販売促進など、小さな農家が自分だけで抱えるにはちょっと「しんどい」というテーマをとりあげる予定です。

  

 

最後は、美味しい有機のお野菜を使ったケータリングで交流会。

■今後の活動予定

今回のプロジェクトのヒアリングと勉強会の内容については、ご要望が多い場合、後日、電子書籍・オンデマンド出版などの形にする予定です。また現在はクローズドな勉強会ですが、こちらもご要望に応じて、公開セミナーも開催する予定です。

■注

ゾーホージャパンはクラウドサービスを提供する会社のため、通常のサービスとしては、今回のようなコンサルティングやzohoのカスタマイズサービスは提供していません。今回は特別に試験プロジェクトとして技術提供していただきました。

 

■プロジェクトの主な企画運営メンバー

 久松農園久松達央(プロジェクトリーダー、企画)

 ゾーホージャパン 松本暁義(技術アドバイザー、開発)

 opnlab  小林利恵子(プロジェクト進行管理、場作り、レポート)

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