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「フォント」は目で感じる声

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モリサワという日本のフォントメーカーで、マーケティングを担当している阪本圭太郎さんにフォントの「あれこれ」を伺いました。

 

フォントは脇役

opnlab 小林(以下、小林):森澤さん(モリサワ 社長)に、どなたかフォントについて語れる方をご紹介してください。役職とかではなく、マニアックに本当にフォントが好きな方を。とお伝えしたら、阪本さんをご紹介いただきました。若いけれども、かなりフォントに詳しい感じがしますが、阪本さんにとってのフォントの魅力はどのような点ですか?

 

モリサワ 阪本(以下、阪本):書体のデザインは目で感じる『声』のようなものだと思っています。 いろいろなメッセージを体現して世の中を彩ることができるのがフォントの魅力ですね。

 

小林:「目で感じる声」というのは、フォントのメーカーならではの素敵な表現ですね。確かに、声で感情が伝わるように、文字の太さやデザインで、伝わる意味や雰囲気が変わってきます。

阪本さんはどのような企業がフォントをうまく活用してコミュニケーションをしていると思いますか?

 

阪本:例えば広告媒体と販売される製品で同じフォントを使う企業などです。

意外とこれがバラバラな企業が多いのです。ただ、最近は企業やブランドの世界観を演出するために、フォントを効果的に使用しているケースも多く見られるようになりました。書体へのこだわりは年々増えているように感じます。

 

小林:デザイナーだけでなくビジネスの現場でも、フォントを意識するようになってきているのですね。

逆に、ビジネス文書やプレゼン資料で、残念だなと思うフォントの使い方はありますか?

 

阪本:何種類ものフォントを使っているケースですね。メッセージの強調を目的としていながら、逆効果を生んでいます。

 

小林:色も多用しないほうがいいですよね。

 

阪本:そうなのです。色もフォントも種類が多過ぎると何に注目すべきか分からなくなりますし、少ないと単調で物足りなさを感じます。特にプレゼンテーションにおいてはフォントは「脇役」だということを意識したほうが良いと思います。

小林:そうすると主役は?

 

阪本:伝えたい「メッセージ」です。
ケースにもよりますが、私は多くても2〜3種類のフォントしか使わないよう心掛けています。 その方が、文字ではなくメッセージそのものが際立つのではないかと思うからです。

フォント都市伝説

小林:脇役であるフォントをより効果的に使うために、知っておくと役立つ知識を何か教えていただけますか?

 

阪本:書体やフォントには長い歴史やたくさんのエピソードがあり、知れば知るほど面白い世界が広がっています。実は、そうした話がフォントを選ぶ時に役に立つことも多くあります。

稀に「◯◯という書体は政治的に外国では使わない方がいいらしい」 というような都市伝説も生まれているようです。

 

小林:それは知りませんでした。そんな話もあったのですね。

 

阪本:もちろんそんな書体はありません。特定のフォントを避けるような習慣があるとも思えません。 フォント選びはどこから手を付けてよいのか迷いがちですが、まずは自分で好きと思える書体と出会うことが大切ですね。

 

小林:そう言っていただけると、少し気楽にフォントが選べますね。

 

阪本:よく「明朝体か、それともゴシック体か」という議論を耳にします。細かくルールを決めている会社や団体もありますので、その場合はそれに沿っていくのがよいでしょう。本来は明朝体にもゴシック体にも、それぞれいくつもの種類が存在しますので、ここぞという時には、印刷会社さんやデザイナーの方々と相談することをおすすめします。

 

小林:TPOみたいなものはありますか?

 

阪本:例えばタキシードを普段着にされている方は少ないと思います。やはりフォーマルな場に選ばれる服でしょう。書体選びにも近い感覚があるかもしれません。
 
試しに自分の名前をいろんな書体で打ってみてください。まるでコスプレしているような感覚になります。慣れ親しんだ言葉である自分の名前のもつイメージと、書体デザインから感じるイメージとのあいだにある種のギャップを感じているのです。洋服が自分自身を表現するように、言葉をどんな風に表現したいかで書体を選ぶとよいですね。言葉選びと書体選びは表裏一体です。

 

小林:まさにメッセージを体現するのですね。

 

達人のフォント選びのコツとは

小林:コンテンツ・文書を格好良く見せるフォント選びのコツ、というのがあると嬉しいのですが。

 

阪本:これは難しい質問です。
文書の見栄えは、フォント以外にもいろいろな要素が関わってくるからです。 文字の大きさ、一行の文字数、句読点の使い方、行間など、印刷や出版では「組版」と呼ばれ、 細かなルールや指南が存在します。

まずは読み手がどんな人なのかを想像し、その人が読みやすく、心地良いものを使うことが、最初の一歩ではないでしょうか。

 

小林:阪本さんご自身では、何を意識してフォント選びをしていますか?

 

阪本:私の場合、できるだけ書体は最後まで決めないようにしています。

 

小林:そうなんですか?
 
でも今までのお話しの流れからすると、自然なのかもしれませんね。中身を練った後、最終的にそれを最も効果的に見せる事ができるフォントを選ぶ。

 

阪本:もちろん見出しを意識して作られたり、読みやすさに重点を置いた書体などはあるのですが、全体のストーリーやスライドのサイズ、会場の大きさなどを考慮して決めています。
仕事柄、その時々の「一押し書体」を何とかして使うこともありますが(笑)
 
小林:その「オシフォン」気になりますね。今度、阪本さんのセミナーを聴講したとき、何が出てくるのを楽しみにしています(笑)

***

気鋭のマーケター、イノベーターが登壇するopnlabのトークイベント

嗚呼、素晴らしきフォントの世界
 スピーカー:モリサワ 阪本圭太郎
 日時:11/25 19:30〜21:00
 会場:新橋
 主催:opnlab

「著作権の枠を飛び越えろ〜オウンドメディア時代のコンテンツビジネス」

 日時:12/08 19:30〜21:30
 会場:高田馬場
 主催:opnlab
 内容:今だからこそコンテンツを持つ組織や作品をつくるクリエイターの可能性が広がる、コンテンツビジネスの未来について、『メディアの未来』の著者 志村一隆、『アイドル国富論』の著者 境真良、電子書籍雑誌「郡雛」に寄稿する池田敬二が熱く議論します。

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