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副作用が危険な法案

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松浦 晋也氏らしいストレートなタイトルの記事で問題に気づきました。
またも出た、児童ポルノ規制に名を借りた思想・信条の自由への抑圧、法案が衆院提出

粗く要約すると、具体的な児童ポルノを禁止することと、自分がいやなことを含むあいまいなことを禁止することは全く異なる、ということ。
今回の改正案と、現在の法律は以下の通り。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律

この改正案によると、今までは児童ポルノを提供することのみが禁止されていましたが、法案では所持することも禁止されることになります。
副作用が危険と思うのは、児童ポルノの定義の3番目「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」。この範囲は相当に広く、恣意的な運用が可能になってしまいます。

僕だって変な画像を見たい/持ちたいと思いませんし、それを他に見せたいと思いません。おそらく、法案を推進している人は純粋な気持ちであり、彼らは上で心配しているような恣意的な運用等は考えていないでしょう。しかし、法律を運用するのは別の人たちであり、その人たちは法律の範囲内で最大限自分たちのメリットに合うことをし、社会に思わぬダメージを与えることになります。この法案の場合は、運用者が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」と考えれば、取り締まりが可能になってしまいます。

自分はそんなことはいないから関係ないと思っていると甘いです。
最近のダンスクラブの摘発はどう思いますか。また、少し前ですが、PSEマークの運用において、いきなり中古品が扱えなくなったことも同じです(Wikipedia)。

最近の憲法改正案も同じ傾向があります。
産経新聞の憲法改正案では、「この憲法が保障する自由および権利は、国の緊急事態の場合を除き、国政上、最大限尊重されなければならない」そうですが、国が緊急事態を定義すればどうにでもできてしまいます。
ソースを見つけられませんでしたが、日本維新の会がまとめた憲法改正案にも『「表現の自由」の保障は、「一定の規制を受ける場合がある」』そうです(時事ドットコムの記事)。
自由民主党の憲法改正案にも、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」とあります。おそらく暴力団等を念頭においていると思われますが、どうにでも運用できてしまう条項です。

確かに制約したい目に余る状態があることはわかります。しかし、あいまいな定義で縛ることは副作用が多すぎることを認識してほしい。導入する側は、そんな運用はしないと言うかもしれませんが、その人がいつまでも運用する訳はなく、永遠にしない保証はどこにもありません。

最後に、塩野 七生氏が「ローマ人の物語」で書いたカエサルの言葉を紹介しておきます。

どれほど悪い結果に終わったことでも、それがはじめられたそもそもの動機は善意によるものであった。

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