【ブックレビュー】浅野泰生さんの『最強「出世」マニュアル』は硬派な一冊だった件。
きっと、このタイトルから誤解される方も多いと思うんですね。「マニュアルで出世できるんだったら誰でもやってるわ。」とか「なーんかチャラい本じゃないの?」という反応をされる方もいらっしゃるでしょう。
そういうわたくしも、このベタなタイトルに最初だけちょっと抵抗を感じました。
なぜならそもそも、この本との出会いが偶然のカタマリ、事故みたいなものでしたので。というのは、面識の全くなかった著者の浅野さんが突然お送りくださったのです。
同封されていたお手紙を拝見すると、浅野さんが掲載されたビジネス誌の前号に、わたくしが載っていたと。それが読書の朝活に関するものだったので、わたくしについていろいろ調べてくださり、会社の住所を見つけて送りましたと書いてあります。
それでこちらも「どんな方やねん」ということでFacebookで検索したら、なんと同郷(愛知県一宮市)でほぼ同い年の方ではありませんか。しかも現在住んでいる街まで同じ。
ここまで共通項があると、どんな方か全然知らなくても、勝手に親近感が湧くものです。すぐにメッセージをお送りし、今度地元で呑む約束までしてしまいました。こんな出会い方をする本って、そうはありません。
さて、本の内容についてですが、当初の心配をよそに硬派で骨のある、しかし読みやすい文体。予想外でした。
浅野さんの仕事観の変化、短期間で社内の昇進を果たした経験から、出世する人の考え方、行動パターンなどをわかりやすく説かれています。さらに、課長、部長、経営陣と昇進する段階ごとの「さらに上を目指すために必要なこと」も網羅。自戒すべき点も多く耳が痛い部分もありましたが、非常に腹落ちする一冊です。
出世、おもしろい言葉ですよね。「世に出る」と書きます。そう、きっと出世って、社内での昇進という狭い世界ではなくて、もともとは広く世の中に出て、どんな人に対面しても恥ずかしくない人間になることを指しているんだと思います。
そういう意味では、結局のところ「人間力」的なものが重要になってくるわけで、ただスキルが高いだけでは思うような出世はできないし、人間性だけ良くても残念な結果になりがちだと。
そこで浅野さんはこんな定義をされています。
「人間力」とは、ビジネス上の利害関係者に何らかの影響を与え、それにより他者に変化を生じさせる能力である
なるほど、巻き込み力のようなフィーリングでしょうか。お客様であっても社内の人であっても、上辺だけの付き合いで済まさないような、そんな「熱」のようなものをちょっと想像します。確かにそういう人って魅力的ですよね。出世させたくなる!
その他にもこんな言葉たちが。
出世する人は、知識など膨大な時間を要することでは勝負しません。年齢や経験年数に関係のない「考え方」で勝負します。
自分の成長にしか興味がないような人もいますが、会社の成長に影響を与えない自己の成長は、会社にとっても社会にとっても価値のない成長なのです。
常にワンランク上の意識で仕事ができる人に対して、後から役職は与えられるものなのです。
仕事の「やり方」は現代のような情報化社会では「検索」すれば出てきます。一方、「あり方」は、教えることには限界があります。「あり方」はワンランク上の立場の人間との対応を数多く経験することで、自分なりに形成していくものなのです。
「出世」を「目的」ではなく、「手段」と捉えることで、自身が最も高いパフォーマンスを発揮できるポジションを獲得し、それによって精力的に仕事に打ち込めるようになれば、会社もあなたもきっと幸せになれます。
うーん、最後の一文、特に染みますね。ここわかんないで、中途半端な働きをしながら「ワークライフバランス」とか言ってる人、よくお見受けします。ちゃんちゃらおかしい。
わたくしごときの事例で大変恐縮ですが少し。つばめやは小さな会社で同族企業ですから、正直なところ昇進もなにもありません。6人しかいない会社で部長だの課長だの作ってもほとんど機能しませんので。ですからはじめから社内での「出世」には全く興味がなかったのですが、自分の立ち位置というか、社内でのポジション作りに関しては、いつも意識をしています。
仕事は与えられるものではなく自分で見つけるもの、見つけた仕事は自分でなんとかしなきゃいけませんからとにかく工夫する。コツコツ続ける。10年間、こういったことを念頭において働いてきました。そのためなら会社でも家でもシームレスに活動しています。完全に公私混同です。
その結果、今のわたくしは他のメンバーとはまったく違った動きをするようになりましたが、それなりに結果が出るようになったこともあり、誰に文句を言われることもなく、社外の方からは「野放し社員」状態に見えているようです。でも野放しじゃないんですね。ワークスタイルが違うだけなのです。それでも会社に貢献している点では同じです。
部下はいませんのでいわゆる「出世」ではないのかもしれませんが、「世に出る」すなわち「世の役に立つ」ということを目的とするならば、その手段、方向性としては間違っていないような気はします。「出世」にはまだまだ程遠いですが、地道にやっていきます。
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