出張中特別篇 生産性問題のカイ
日本生産性本部の研究調査によると、日本の生産性はOECD33ヶ国中22位だそうです。ただ、製造業に限定すると6位。つまり小売業とか飲食業などのサービス業の生産性が非常に低いことになります。製造業の生産性が相対的に高いことは感覚としても理解しやすいですが、その他の産業の生産性の低さは愕然とする数字です。
ここでの生産性は、私の理解ではマクロの結果指標です。つまり、景気が良ければ生産性も上がるし、景気が悪くなればビジネス全体のパフォーマンスが下がるので生産性もさがる、ということになります。とはいえ、生産性向上のための取り組みは経済状況を改善する一助にもなると思っています。
この生産性の向上のために何が必要か、という点について様々な提案があり、さまざまな取り組みが考えられていると言えます。
マイクロソフトに所属している私としては、ITの生産性向上に果たす役割を考えるわけです。
マイクロソフトが設計し提供している「ワークスタイル分析調査」というものがあります。もともとはITの導入と活用の状況を調査し、それが個々の業務スタイルをどの程度改善し、組織としての効率性や生産性にどの程度影響しているかを明らかにしようとするものでした。毎年調査内容を改善し得たデータ数も相当数に上っていました。2007年にこの同じ調査をアメリカでも実施しまた。
両国の比較からわかったことは、ITの活用度がかなり異なること、その結果として、働き手の意識に違いがあること、です。この調査では、因果は説明出来ませんが、ITの活用度と働き手の意識の高さには相関関係があることが説明出来ます。詳細は下記にまとめて発表させていただいております。早稲田ビジネススクール・レビュー 第八号 「ワークスタイル分析と日米比較の試み」http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/K00940.html
その時に利用した図を一つだけご紹介しましょう。日米の違いを最も端的に示す図です。
この調査は、いくつものシナリオ(シチュエーション) の際に、その状況で想定されるITの使い方ないしは機能について、4択で回答するよう設計されています。
- 出来ているがもっと良くして欲しい
- 出来ているので現状のままで良い
- 出来ていないため実現して欲しい
- 出来ていないが現状のままで良い
4択を見ていただいてわかるように、決してITを活用する方が良い、という前提には立ってません。もっと活用したいのか、現状のままでいいのか、利用者側の意識が反映されるところに特徴があります。 これを我々がダイヤモンドチャートと読んでいる図に落とすと特徴が端的に表れます。下記の図が日米比較という視点からダイヤモンドチャートを作ったものです。 特徴は二つ。 • 米国は「出来ていないため改善して欲しい」と回答する割合が日本の半分以下である ここから読み取れることは、やはり米国では、ITの活用は進んでいてその状態に満足している人が約半数いる、ということです。 もちろんこのデータと生産性を直接結びつけることには無理があるでしょう。でも沢山ある要素のひとつには考えられるかもしません。何しろ、日本の場合、3人に一人は「出来ていないため改善して欲しい」と思っているわけですから。ユーザー側が改善の余地があると思っているにもかかわらずそれが改善されていない、という日本の状況が透けて見えます。これは現場の意見を取り入れ改善を積み重ねてきた製造業と大きな違いとなっているように思います。
• 米国は、「出来ているので現状のままで良い」と回答する割合が日本よりかなり多い