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「やり方」と「在り方」

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もちろん目的あってのことですが、人材育成やさまざまな問題解決の場面において、「やり方」重視、というか、やり方の習得や実施に主体者の注意がいってしまって、「どう在(あ)るべきか」がおざなりになっているような気がします。

ここでいう「やり方」とは、プロセスやツールです。「在り方」とは、マインドやプレゼンス(存在感)と言い表すことができます。

やり方重視の傾向は私がエンジニアだった頃から変わらない様に思います。今も思い出すのは、私が若手エンジニアだった頃、有名なアーキテクトの講演を聴きに行ったときのこと。まあ、その方は大変優秀なアーキテクトでしたので、会場に来ていた何百という聴衆が、壇上のアーキテクトの話に聞き入っていました。しかし私はこの壇上の人と、下で聞いている私たちの間に大きなギャップを感じて、「この人ができて私たちができない、決定的な事柄は、今この人が話していることとは根本的に違う何かなのではないか?」と思いました。その人は、「何のために、何を、どうやるか」ということを成功体験に基づき話をしてくれていたのですが、「この人から学ぶべき重要なことは、そこではないのではないか」と。漠然とでしたが、感じていました。じゃあ、何か、というところまでは当時わかっていませんでしたが。

あれから長い年月が経ち、私もいろいろと学ばせて頂きました。少なからず「人を育てる」という仕事もさせて頂いています。さまざまな経験を重ねる中で気づいた、若い時の違和感が、冒頭で書いた「やり方重視で在り方後回し」でした。

伝える側も受け取る側も、在り方をおざなりにしようと全く思っていないが、結果的にそうなってしまう。その原因を考えてみました。


【原因】

・(在り方を)伝えているが伝わっていない

・そもそも伝えていない(伝え方がわからない)

・伝わっているが、(受け取る側が)実践していない

・伝わっていて実践しているがうまくいかない


【それぞれの対処方法】

・伝えているが伝わっていない → 伝える側が工夫する

・そもそも伝えていない → 伝える!(でも実は伝え方がわからない!)

・伝わっているが実践していない → 伝える側が実践することの価値もちゃんと伝える(もしくは実践まで面倒をみる)

・伝わっていて実践しているがうまくいかない → 伝える側が実践できるようなやり方も一緒に伝える(もしくは実践後まで面倒をみる)

私が「伝える」側なので、そちら側に厳しく書くと、やはり伝える側がもっとちゃんとやらなければなと思います。ただ、3番目、4番目は、そこまで労力を使えるのかと言うと、予算の問題もあって、今度はお金を出すところがその価値を理解するかどうかという別の問題になってしまいます。まあ、いろいろと難しいところではあります。しかし!受け取る側が少しでも実践して効果を出せるように、伝える側が知恵を縛り切ることが必要だろうとも思います。


【工夫の仕方】

・やり方の前に在り方を教える

・在り方ができていなければできないようなやり方を教える

  →やり方の中に完全に在り方を組み込む。意識的にしっかりと。

・やり方と在り方を全く別々に教える

私は2番目を実践しています。1番目、3番目はやったことがありません。


【「伝え方がわからない」という問題について】

もしかしたら、今回私が一番言いたいことはこれだったかもしれませんが、プロセスの進め方やツールの使い方など(要はやり方)は誰もが1から学ぶので他者にも伝えやすいのですが、マインドやプレゼンスは、実は生まれ持った資質に依存している所が大きく、もともとできている人は無意識にやっているので、そこを他者に伝える、っていうのは、実はとても難しいのではないか、というのが今のところの私の考えです。


しかしながら、人を育てたり、何かを伝え残していく立場にある人は、「やり方」と共に「在り方」も残していく努力と工夫をする。これが大事です。


部下育成においても同じことが言えます。「やり方」を伝えるだけではなく、「在り方」を部下に見せられているかどうか。皆さんはいかがでしょうか。


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