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もしも洞察力があったなら……。

【広報かるた】・【け】見解の相違ですね。訂正はできません。

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「がーん!記事の内容が、言ったことと違う!」

せっかく社長との取材を経済誌の記者と組んで対応したのに、社長が言った内容と、記事の内容が食い違っている。などというショッキングな出来事に出会った広報パーソンはきっと沢山いるでしょう。

社長にこのまま見せたらきっと大目玉だろうなー。やだなぁ。

というのは中堅広報マンがひそかに抱く本音です。

そして、なんとか記者にメッセージの本質を理解してもらいたい。

このような動機で、件の記者と連絡を取るわけです。

「あのー、記事拝見しました。ですが、一部間違っているところがありまして・・・」

「んー?なに?どこが間違っているわけ?」(ややぶっきらぼう)

「社長は、新製品の開発が進んでいて、業績の堅調な回復を視野に入れている、と言ったのであって、A製品分野を売却して市場撤退するとは申し上げていないわけで・・・」

「そうかな。社長は確かに、今回の業績悪化の主要因はA製品の不採算性にある、だから見切ることも検討しなければならない、とそう言ったわけですよね。」

「いえ、でも、断定はしておりませんし、その直後に新製品開発と意気込みの話しをさせていただいたじゃないですかー」

「ああ、だからそれも書いてあるじゃない。ちょこっと。」

「いえ、ですから、あの、見出しをあんなに大きく“A製品事業を売却か?”なんて書かなくてもいいじゃないですかぁ」

「ん?あんた社長が言ったことを見出しにして何が悪いの?何か間違っている?」

「いえ、その、、発言の主旨が異なるもので。。。訂正とかできませんかね?」

「何言ってんのかな。こっちはコメントを載せたんだよ。訂正なんてありえないよ。見解の相違だね。」(ガチャン)


・・・というのはかなり極端ですが、内容はともかくこれに近いやり取りをした方は案外いらっしゃるでしょう。

見解の相違、というのは、広報の主張と編集記者の主張がまったくかみ合わない時や、広報のやむを得ないが理不尽な主張を退けたり、広報が言っていることは正しいのだけれども、編集記者が報道の正確性を読者視聴者に貫き通したいときに使う「マジックワード」です。呪文みたいなものです。

この「見解の相違ですね。」なる言葉が編集記者からでたら、「これ以上の交渉には応じません。」と言っているのと同じです。時間の無駄です。さっさと社長や関係者に報告して事態の収拾に当たりましょう。

ところで、そもそも、記者が訂正に応じる可能性があるケースとはどのようなものでしょうか。

1)数値など客観的な事実が間違っていた場合。悪意はなく、単なる誤記のケースがほとんど。

2)明らかに言質(げんち:コメント)を間違って記載した場合。これは記録テープをベースに議論するといいでしょう。テープがなければ「私のメモにはこう書いてありますけどね。」と切り返されます。

3)専門的すぎて編集記者があまりご理解いただけずに記事にしてしまい、その内容が著しく間違っていた場合。レアケースですが、これは話し手にも責任がありますので、懇切丁寧にレクチャーをして相互に解決をしていきましょう。

つまり、ここに当てはまらない「なんであのコメントを載せ(放映し)たんだ。」と言うのは、編集権をくださいというのと同じくらいに主張を通すのが難しいのです。なので、広報の心構えとして次のことに気をつけるといいでしょう。

1)事前にしっかりスポークスパーソン(例えば社長)にブリーフィングする。ならぬものはならぬ。言ってはならぬことは絶対に言わぬようにする。
2)録音する。
3)掲載記事はつぶさに読みとく。そして速やかに報告する。しかし、一喜一憂しない

蛇足ですが、訂正の依頼なんて、滅多にするものではありません。大抵はお互いを傷つけあい、良い関係を破壊して、次の日からその編集記者との仕事がしにくくなるものです。だからこそ、準備を入念に。成功する取材への一歩です。

Happy取材活動!

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