【広報かるた】・【こ】広告換算値、ドヤ顔アピール。マーケにケンカを売るつもり?
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広報は活動の成果をしっかりと捕捉し、社内に共有し、その事業会社にとっての存在価値を高めていく必要がある、と私は言い続けていますが、さてそれはどのように行うべきものでしょうか。
過日、広報の効果測定に関する講演で、会場にいた100名ほどの広報担当者に伺ったところ、その多くが採用していたのが広報活動による記事等掲載を「広告換算」して金額で評価するというものです。
広告換算とは「もしもこの記事を同じ大きさやタイム(テレビなど)で広告を出すとしたらいくらかかるのか?」というものです。新聞記事ですと見出しの段数や実際に紙面に占めた割合、大きさを勘案します。雑誌の場合はページ数換算。広告掲載1ページ単価が100万円の雑誌の場合、全体の1/4を占めていたら、これを係数にして100x1/4で25万円分を計上します。こうして積み上がった換算値を「今月の広報成果」としてアピールするのです。
ご存知の方もいるかもしれませんが、広告換算値は比較的数字を出しやすく、日本の大手経済新聞にちょこっと載っただけでも100万円を越えますし、大手日系のビジネス誌では1ページの単価が高めですから、すぐに数百万円の計上が可能です。また、大手日系コンピュータ誌でも数十万円から百万円の広告換算が可能です。
さて、皆さんの事業会社でマーケティング予算、中でも広告宣伝費はどのくらいお持ちでしょうか。広告主体で事業を展開する一部の消費財企業を除き、その予算はきわめて限定的なのではないでしょうか。特にB2Bにおいてのそれは、決して潤沢にあるということではないという認識をしています。
広告宣伝費が決して潤沢ではないマーケティング部門は、お金を効率的に、効果的に使うための施策をたくさん行っています。つまり、なるべくお金を使わずに頭を使おうということです。そんな中、ある人突然広報部門がやってきて「今月の広告換算値は、1億円でしたー!!」とドヤ顔でアピールをしてきたら、広告宣伝部長はどのような顔をするでしょうか。「さすが広報さん、今月もがんばっていますね。」と賞賛をしてくれるでしょうか。
んなわけない。
きっと多くの広告宣伝部長は部長だけに仏頂面で、「なんやおまえ、けんか売っとんのか。」とは言わないまでも、終始不機嫌でいることは間違いありません。万が一、その報告会に出席した社長さんが、「広報はがんばっているね。ところで広告宣伝はどのくらい使っているのかね?」などとよけいな質問をしたら最後、広告宣伝部長は二度と広報と協力してがんばるなどとは言わなくなるでしょう。ひどい場合には、販促キャンペーンの打ち合わせに呼ばれなくなるなど、意地悪すらされるかもしれません。
また、その広告換算は、果たしてその記事がどのように評価されるべきか、その内容はポジティブなのかどうか、メッセージが正確に織り込まれているかどうか、など中身ついてはいっさい言及しません。結果としての数値化であって、極端に言えば広告のように好きなメッセージを自由に載せたりはできない訳です。編集権がメディア側に帰属している以上、至極当然のことですね。つまり、広報活動の成果としての記事掲載にはリスクがあります。そして、コントロールはできません。これを考えたときに、広告換算とはいったいどのような意味をもたらすのでしょうか。
私が従事してきた会社では、早々に広告換算値を廃止しました。上記の理由とともに、ビジネスを誘発するための実態を示していないからです。まず、ターゲットに何を伝え、どのような変化を促したいか、その道程は何か。これをしっかり定める必要があるでしょう。そして、それらが正しいときに、正しい内容でしっかり伝わったかどうかを分析する必要があります。広告料金という、媒体社が決めた料金に惑わされることなく、その媒体のインパクトを推し量り、選択をしていく必要があるでしょう。
ソーシャルメディアやオンラインの媒体が隆盛している今日、広告換算値は広報の効果測定としては「生きた化石」です。もはやその会社や事業を支援するためには何の役にも立ちません。多くの方々が広告換算値しかご存じない*のでこれを未だに使っているようですが、もう少し勉強して、自社に合った効果測定の方法を編み出す必要があるでしょう。
*先述講演会でのアンケートより
ご参考
「広報の成果を見える化するグローバルIT企業」
訂正:消費材→消費財
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