質問を恐れない心構え10
「日本人は、なぜ質問をしないの?」
京都でアメリカ人のジェニファー(仮名)と食事をしていたときに、詰め寄られました。
「ふむ、いい質問だね。」
と、私は“グローバルな人材”を装って西洋風にまずはひとこと。
そして、ほとばしるように出た言葉は次のようなものだった。
「いいかいジェニー、日本人ってのはね、誇り高き民族なんだ。そして何より、和を重んじる。昔から日本のことを“和”って呼ぶくらいだからね。」
さぁ、きたよ、たまちゃん節。
続けます。
「日本人はね、自分が馬鹿であると思われたくないんだ。そして、他の人と同じでいたい。他の人と同じようにっていうのは、平均か、それよりちょっと上くらいがちょうどいいと感じるんだ。つまりね、誰もが質問する前に率先して馬鹿みたいな質問をして、その場がしらけてそのあとに誰も質問する人がいなかったとしたら・・・」
「ハラキリ?」
「そうだよジェニー。するどいね。目の付けどころがシャープだね。まぁ、本当に切腹したらちょっとその場は騒然とするし周りも困っちゃうからそこまではしないにしても、心の中は“介錯お願いします!”ってな感じになるだろうね。」
ここまで一気にしゃべって、私は目の前にあったお水を一口飲んだ。
「つまりね、日本人が大勢の前で質問をしないのは、自分の質問がその場の知的レベルにふさわしいか、質問することで自分は恥ずかしい思いをしないかどうかを一生懸命考えているんだ。そうして、考えているうちに終わっちゃう。」
ジェニファーはその青い目をキラキラと輝かせながら私に詰め寄ってきた。
「じゃぁ、本当はわからないことがあるときはどうするわけ?」
私は心の中で(ぐぅ)と言いそうになったが、負けていられない。
「日本人はね、わかったふりをするんだよ。わかっていなくてもね。で、実際には、断片的に与えられた単語や情報をつなぎ合わせて自分の理解したことをベースにストーリーを作り上げるんだ。驚くことにこれが真実と違わなかったりする。日本人はね、そういうの得意なんだ。腹芸、物いわずにものを言う、イチ言ってジュウを理解する、空気を読む、とかいろんな言葉があるんだけど、要はcontext communication、行間を読み、文脈をつなぎ合わせるのに最も長けた人たちなんだよ。そういう意味では、創造力豊かだし、知的レベルはおしなべて高いと思う。だから、質問がなかったとしても心配はいらない。日本人はその特別な能力を発揮してすべてを掌握している。つまり、さっきの質問に答えると、日本人にはね、わからないことなど何一つないんだよ。結果的にね。でもね、君みたいに外国の人たちが会議に混ざっていたりすると、みんな調子狂って、ただの物静かな民族に見えちゃうんだよね。全員じゃないけどね。」
「ふぅーん、ザッツ・インタレスティング」
・・・
とまぁ、こんな風に会話をしたわけだが、実際に、グローバルの会議や会合に日本人が参加した場合に私たちはめったに発言しない。それは、せっかくの学びの場で、コミュニケーションの場であるはずなのに、やはりちょっともったいないと思うのだ。そこで、いろんなところで質問ができるように、「質問を恐れない10の心構え」を披露したい。
1)あなたは質問することで必ず成長すると考える。
2)その質問は、自分と、会場にいる他の誰かが知りたいことでもある。
3)質問をすれば、質問をしなかったと後悔することはない。
4)質問は、前日に3つ考える。そのうちの一つを質問する。
5)質問が思い浮かばない場合は、自分の意見を3つ考える。その意見を導き出す質問を考える。
6)可能な限り最初に質問をする。最初に質問した者は、覚えてもらえる。
7)質問は、ただである。
8)その回答は、富を生むかもしれない。
9)どうしても質問が思い浮かばなかったら「あなたが私たちに期待するアクションはなんですか?」などと、ソクラテス的な質問をしてみる。
10)聞くは一瞬の恥、知らぬは一生の恥と叩き込む
*前半のダイアログは、事実をベースに脚色を加えたフィクションです。実在する人物との関連性はあまりありません。