必読:日経ビジネスムック「twitter--会社と仕事はこう変わる」
もし、貴方が全くのプライベートに限ってソーシャルメディアに参画し、それがこの先も変わらない、と決めているのでなければ、このムック(Book+Magazineの造語)は読んだほうがいい。さすが日経ビジネスの編者が纏め上げているだけあって、内容の充実感、視点の確立感は秀逸である。
ソーシャルメディアの中でも時代のパラダイムシフトに大きな影響を与えつつあるtwitterをビジネスの視点で見始めると、人生と仕事という重苦しいテーマにぶつかることがある。個人名、所属を公開し、不特定多数の人々に向けて今日のお昼はカトキチうどんだとか、ドロリッチを飲んでいるとか、理事会や野球に精を出しているとかいう一方、データベースマシンの話をしたり、グローバルカンパニーのあり方について言及したり、場合によっては日本経済の行く末を案じてみたりする。そういった様々な事柄を同時多発に思考し、I/O(インプット・アウトプット)していくのが本来の人間なのだ。しかし、社会生活を営む上では、個々のTPOに応じた役割を演じることが求められる。真面目な議論の最中に最近流行っているお笑い芸人の話に興じては場が白けるし、大好きな音楽の話をしているのに政治思想の話を持ち出されても困る、という具合だ。一昨年のはやり言葉で言うと、まさに「場の空気を読む」ことが、オフラインの世界ではまだまだ求められるのだ。いや、もちろん、オンラインだって空気を読むことが必要だ。しかし、twitterでは、いとも簡単にその空気の設定を自分で行うことができるのが、あらゆるコミュニケーションの手法の中で秀逸だといわれているゆえんかもしれない。
ビジネスやテクノロジーのことをつぶやいた直後に、自分の脳裏をよぎったおいしそうなラーメンの話をしたっていいわけだ。それを許容できるコミュニケーションチャネルだからこそ、堅苦しくなく人々と繋がりあうことができる。これは途方もない価値をうみだしているのだ、と改めて思うのだった。ちなみに、こうしたことをインスパイアさせてくれたのは、同ムック冒頭の孫正義氏のインタビュー記事であった。この方のお話は、深い。ぜひ多くの方に読んでみてほしい。
そうそう、空気を読む、というテーマについては、フライシュマンヒラード社長の田中愼一氏の上梓された「破壊者の流儀」を読むといい。織田信長に思いをはせた茶会に参加した小泉純一郎氏、孫正義氏、さらに、著者が属していたホンダ創始者、本田宗一郎氏とのエピソードを交えて空気とコミュニケーションに関する深い話を展開している。私たちは偉人たちの業からまだまだ多くのことを学べるのだ。