会社のことをTwitterに書くだけで将来キャリアに不利益があるのだろうか
ソーシャルメディアの世界は、喩えれば、漆黒の海である。波の高さも、水の深さも、中に潜む生物も、危険水域も、一切が闇の中である---あなたが眼を開くまでは。
Twitterのタイムラインを見ていたら、「Twitterに会社のことを書き込むとキャリアに不利に働く」という主旨のコメントがなされていた。情報源としては、欧米のニュースのもののようだが、これにはいささか納得ができない。しかし、よい視点であり、多くの気づきを誘発するものとして共有し、また、私なりの考えを書いてみたい。
まずもって、Twitterは道具である。だから、使い方によってうまく作用したり、また、悪く作用したりもする。この視点では、包丁や薬などと変わらない。ただ、包丁や薬には用途や目的が予めはっきりしているので、悪く作用することは、一般的には、少ない。(とはいっても、新聞社会面は日々にぎわっているわけだが)
Twitterは「こういう目的のために使ってください」という限定的なマニュアルはなく、利用する目的は、利用者が勝手に決めていい。いうなれば、石器時代の石や棒切れのようなものである。
そして、「会社のことを書くと不利になる」という言葉は、重要な要素を欠いている。もちろんそれは、「正当な理由なく、守秘義務をおかして会社の不利益になることを書く。」である。
もしも、会社の利・不利益を充分配慮し、守秘義務を遵守しながら、日々の活動や、仕事をしていてうれしかったこと、楽しかったこと、皆に参加してほしいイベント情報や、ちょっとためになりそうな情報をつぶやき続けていたとしたら、あなたのキャリアに不利になることはあるだろうか。どんな重い処分が待っているというのか。私にはまったく想像がつかない。
これを誘発するものこそが、ガイドラインなのである。Twitterやブログやソーシャルメディアをきちんと個人が認識し、事業会社が認めるためには、越えてはいけない線を決める。その線を越えた人には厳しい事態が待っている。たったそれだけのことだ。こうしたガイドラインを作ることなく「アレはダメだ、これは怖い」というのもこまったものだが、ガイドラインがあったとしても、読み、理解することなくあれもこれも不平不満をすぐ吐き出してしまうのはいかがなものか、なのだ。
ソーシャルメディアは産声をあげたばかり。現状はまだ混沌としているのは仕方がない。電話やテレビのように市民権を得るまでにはもうちょっとだけ時間がかかりそうだ。しかし、市民権獲得の加速度を上げるのは、このことについて真剣に考えようという人たちのムーヴメントに他ならない。そのためには、事業会社こそが立ち上がって、この「誰にも止められない流れ」のガイドをしていけばいい。
しかし一点だけ注意しなければならない。ソーシャルメディアのガイドラインという、コミュニケーションへの一種の介入はあくまでも原則的であって、細則的であってはならない、ということだ。原則を決めるにとどめ、それらを越えたかどうかは、個別に、実質的に判断していくべきものだ。細則主義で縛り始めると、コミュニケーションの方法やコンテンツに変化が生じたときに、あっというまについていけなくなり、形骸化するからだ。
参考までに、オラクルがグローバルで制定しているソーシャルメディアガイドラインの項目の一部を紹介する。
- 倫理規定を遵守すること
- 機密情報の開示をしない
- 好ましくない、または挑発的なコメントをしない
- 会社を代表した発言をしない
- 匿名書き込みをしない
- 著作権の尊重をする
などである。
他にもいくつかあるが、どれも至極良識的であり、納得ができるものだ。こうしたガイドラインの助けによって、より多くの人たちが、ソーシャルメディアという海で快適に遊泳できることを期待している。