オルタナティブ・ブログ > ニュータイプになろう! >

もしも洞察力があったなら……。

マンションの理事会と野球チームの会議で体験したコミュニケーションの違い

»

先月のとある週末になりますが、立て続けに性格の異なる2つの会議に出席をしました。ひとつはマンションの理事会。もうひとつは野球チームのコーチ会議。

マンション理事会は、月に一度の定例会議で、その月に決めなければならない環境、安全、建築関係に関連する事柄のディスカッションと決議でした。規模の大きいマンションのため、約30名で構成する理事会。理事長、総務、会計、安全、建築、環境などの各担当、グループが月次のアップデイト報告をしながら進めるというもの。現役のビジネスマンが多いのか、議事進行は企業の会議体とほとんど変わらず。また、専門家が幸いにも各グループに一人はいるようで、なかなかプロフェッショナルな報告内容と、とっても頼もしい。ビジネスシーンで見かけるそれと変わらないせいか、説明は客観的で、論理的で、資料などはそれ自体が一人歩きしてもほとんど意味を理解できる完成度の高いもの。ちょっと褒めすぎの感じもしますが、コンテンツがしっかりしているなぁ、というのが私の感想でした。

Cimg1538
そして、翌日に参加したのが少年野球チームのコーチ会議。4月からの新年度に伴い、新しく上級生になるチームの体制作りや、新監督所信表明が主な内容でした。そこで話された内容は、共に汗を流し、チームの勝利を目指してきた仲間にしか理解できない、ディープな内容。新参者の私には少々理解が困難な箇所も。特に、指示代名詞を多用して話が進むからなのです。はじめの30分ほど、そのような会話が成り立つことが不思議でなりませんでした。が、私以外の人たちがしきりに「ウンウン」とうなずくのを見て、もしかするとわかっていないのは私だけ、と思い当たったのです。

新参者の私には理解の難しい内容でしたが、過去何ヶ月、何年と共に時間や空間を共にしている人たちにとっては、指示代名詞「アレ」「ソレ」は特定の何かを指すことが当たり前になっているようなのでした。人は、長く共にすごすと具体的なコンテンツコミュニケーションをしなくても、空気や雰囲気、前後関係で成立する「アレ、ソレ」のコンテクスト(文脈)コミュニケーションがしっかり成り立つようです。

これは、実体験としては驚きでした。マンションの理事会は毎年交代します。つまり、毎年、新メンバーが目的を共有し、つつがなく過ごし、次に引き継いでいくわけです。あらゆることへの誤解を排除し、きちんとコミュニケーションを成立させるために、一言一句が配慮されながらも、具体的にやりとりされます。一方、同じ釜の飯を食うほどの関係がコミュニティに形成される野球チームの間では、具体的な言葉は徐々に不要になってきます。例えば、少年を内野に立たせて、ホームベース付近でコーチの一人がバットを持って立ち、「アレ、取ってもらえますか?」といえば、それはきっとボールのことだし、「スィングは足を開いてひざ柔らかく。ボールが来たらアレをギュっとしてバーンだよ」と言えば、足腰をしっかり捻ってジャストミートする、でしょうし。

いやいや、これは冗談ではなくて実際のシーン。私はというと、文脈やクウキを読むことの重要性を信じていて、つまり、コンテクストコミュニケーションというのは本当に、テレパシーのように(決して超能力とかそんな話がしたいのではなく)高度な情報の伝達手段だな、と確信しているのです。

Comment(2)