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私は会社を経営する傍ら、これまで採用の“現場”を見て、さまざまなアドバイスを行ってきました。また、学生のビジネススクールの運営にも関わっており、最近の学生の生の声にもたくさん触れています。本ブログでは、「いまどきの採用・教育・若者」と題して、これまでの経験で得たノウハウを少しでも現場で活かせる為の情報発信を行っていきます。

「AI採用」の現状

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2017年5月にソフトバンク社がAI(人工知能)選考を導入するなど、企業の採用選考にもAIが導入されるようになってきました。
いわゆる「HRテック」の活用によって採用活動が変化し始めているのです。
「HRテック(HRTech)」とはHR(Human Resources)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で採用活動や人材育成といった人事業務の改善を行うソリューションを意味する言葉です。
アメリカでは「HRテック」の活用にお金をかける企業も増えており、今、注目の集まっている分野ですので今後、日本でも導入が大きく進むと考えられています。
「HRテック」の進化による「AI採用」の動向について考えてみたいと思います。

●現在の活用は書類選考が中心

前述したようにソフトバンク社が18年卒採用に「AI採用」を導入したことはニュースになりましたので、多くの方がご存知かと思います。
導入したのはエントリーシートなどの書類選考で、結果、人事担当者がエントリーシートの熟読作業に充てる時間を7割ほど軽減できたとのことです。
またAIを合否判断に活用することで「統一された評価軸でのより公平な選考を目指せる」と説明しています。

確かに人事担当者の声の中には「たくさんのエントリーシートを読んでいると同じような内容のものも多く、正直飽きてくるし、判断基準が鈍ってくる」といったものもあります。
応募者の多い大手企業や応募者数に対して人事担当者の人数が少ないといった企業にとっては導入メリットがあると思います。
ただ、そのメリットを得るためにはこれまでの採用事例の蓄積が必要になります。
自社に合った活躍できそうな人材をAIに判断させるといってもその判断基準となるデータがなければ無理な話です。

過去にどういった人材を採用し、その中で活躍しているのはどんなタイプかといったデータをAIに学習させることから「AI採用」は始まります。
「AI採用」を導入する場合はまず自社の過去の採用事例を整理していくことが必要不可欠です。
AIに読み込ませるデータが多い方が判断基準もより確かなものになっていきますので、過去の採用事例の多い大企業の方が導入メリットも大きいと言われています。

●面接官もAIが行う時代になる?

現在は書類選考が中心の「AI採用」ですが、AI面接官の開発も進んでおり、相手の外見や見た目の印象に左右されにくく、客観性や公平性が高いため、開発が期待されています。

AIの質問に対して学生が答え、その答えの内容によって判断するというものですが、文字が音声に変わっただけで書類選考と基本的な仕組みは変わりません。
ですので、書類選考同様、自社の過去の面接での質問のやりとりなどのデータをAIに学習させる必要があります。

AI面接官に期待が集まる中、2017年12月に人材サービス会社のエン・ジャパン社が、学生に向けて「AI面接体験会」を開催しました。
スマートフォン相手に面接を体験した学生からは「面接官に外見だけで判断されない安心感がある」「面接官の威圧的な態度もなく、緊張せず自分のペースで話せた」などおおむね満足といった声が多かったとのことです。

しかし、その反面「相手(面接官)の表情が見えなくて戸惑った」「人との会話なら、笑いが起きて話が広がることもあるのにただただ形式的に進んでいくだけだった」といった戸惑いや不安の声もあるようです。

エントリーシートの選考に「AI採用」を導入したソフトバンク社は「AI採用」に期待し、そのメリットを感じながらも「AIがNGと判断したエントリーシートは念のため、人が再度確認する」「一緒に働く人を採用するには、やはり最後は人の目を通さないと」とも言っています。

AIに期待しつつも全てを任せるにはまだ不安や課題が多いというのが現状と言えるのではないでしょうか。

●採用担当者に求められるもの

不安や課題が多いとはいっても「AI採用」は今後も益々導入が進むと考えられています。
就職情報企業マイナビ社の「AI採用」に関するアンケート調査によれば、調査企業1956社中、今後、AIを選考に利用したい企業は48.5%、学生7081人中、AIによる選考に賛成の人が43.8%となっています。
数字だけ見れば半数以上が反対とも言える訳ですが、上場企業に限れば約7割が利用したいと回答しています。
「HRテック」の進化によって、今後、AIの機能がより充実していくことを加味すれば、数年後には賛成が反対を上回ってくると予想されます。

また「AIによる選考」ではありませんが、マイナビ社が学生向けに2019採用でAIエンジンによる新たな企業検索サービス「納得できる企業研究」を開始しています。
これは学生の興味・関心のあることややりたいことを自由にフリーテキストで入力し、志望業界や希望勤務地等を入力すると、AIが希望にマッチする企業を紹介するというものです。

こうした過去のデータに基づいた属性の分類やマッチングといった点で、AIの活躍の場は確実に広がっていくと思われます。
そうした中で、採用担当者に求められるものも変わってきていると思います。

前述のソフトバンク社は「AIの導入で余剰になった人事担当者の時間は、応募者との対面コミュニケーションに充てる」としています。

営業などの実際の仕事の場でもインターネットツールなどの導入で対お客様とのコミュニケーションの方法は大きく変化しています。

しかし、いつの時代も最後は人対人の対面コミュニケーションが重要だと思います。

それと同じで採用活動の最初の段階での棲み分けはAIが行っても最後は対面してお互いを判断することが重要なのは昔も今も変わりありませんし、今後も変わらないと思います。
だからこそ、採用担当者には現代の若者と潤滑にリアルコミュニケーションをとり、自社に惹きつけていく力が今まで以上に求められてきます。

また「未来に向けて、これまでとは違った新しい発想や価値観を持った人を採ろう」となった場合、AIは過去の蓄積データを元に判断するので「これまで採用したことがないタイプ」ははじかれる恐れがあります。

「AI採用」を導入するのであれば、AIに任せるべきところは任せ、その分採用担当者が中身の濃いリアルコミュニケーションをとるために自身の力量アップも含め、より創造的な仕事を行っていくことが求められてきています。

以上、何かのご参考になれば幸いです。

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