"複業"について考える
2018年は複業解禁元年と言われ、大手企業を中心に多くの企業が複業を認めはじめています。
これまで日本企業のほとんどは「複業禁止」でした。
それが解禁となり、その流れが加速しています。
なぜ、今、複業解禁なのか。
解禁することで企業はどんなメリットがあるのか。
働き方改革が叫ばれる中、企業と従業員のこれからの関係はどうなっていくのか。
今回は複業の"現在"について考えてみたいと思います。
●つい最近まで日本企業のほとんどが複業禁止だった
日本企業のほとんどが複業を禁止していたのは高度成長期の慣習の影響だと言われています。
その時代は年功序列で「終身雇用」「年功賃金」が一般的でした。
そのため、残業や休日出勤なども当然で、企業のためにとにかく「尽くす」という時代でした。
その結果、企業の売上高も日本のGDPも右肩上がり、そして、労働者の所得も右肩上がりという状態でした。
この時代は会社と家庭という2つの世界のみが生きる場所であり、そもそも複業をする時間もないし、そんなことを考える必要もなかったと言えるでしょう。
しかし、高度成長期が終わった後も企業の複業禁止は続きました。
その理由は社員の長時間労働を一層助長することになるとともに労働時間の管理ができず、社員の健康を害す可能性がある。
情報漏えいのリスクがある。
優秀な人材とスキルの流出につながる。
といったことが主なところです。
しかし、世界に目を向けると日本企業の考え方は一般的ではありません。
もちろん、競合企業などでの仕事は禁止、機密保持は絶対などの規定はありますが、基本的には業務時間外は個人の時間であり、その時間に何をしても自由という考えがほとんどのようです。
では、なぜ今、日本で複業が注目され始めてきているのでしょうか。
その理由の一つとして、政府がその促進に動き出し、メディアなどでも複業容認の取り組みが取り上げられる機会が増えています。
そうした中、世の中の複業に対する考え方が急速に変わってきているのです。
●なぜ複業解禁なのか?
企業が複業を解禁し始めた理由としては「終身雇用という形で企業が従業員とその家族を守り続けることが当たり前ではなくなってきている中、各自の責任において、次の道を拓いておいて欲しい」「本業に相乗効果のある複業を許可することで、従業員のスキルアップや、マーケティングなどの営業活動に役立てたい」といったこと等が挙げられます。
また「複業を認めることで、時間の有効活用や経済的余裕を持ちたいと考える社員の満足度を高めたい」といった理由もあります。
特に専門的なスキルを持っている人は本業と並行して複業を持つことで、自分の知識や能力を生かす場が拡がり、結果、収入も増えるのではないか?と考えるようになりました。
以前は優秀な人材とスキルの流出を防ぐために複業を禁止した訳ですが、今や複業を認めないと優秀な人を採用することやそういった人材を繋ぎとめておくことが難しい時代になってきているのです。
こうした動きが徐々に大きくなっており、複業ワーカーが増えているのです。
逆にそうした複業ワーカーを活用することで人手不足を補おうと考える企業も出てきていますし、企業と複業ワーカーとを繋ぐ、複業仲介サービス会社も増えてきています。
●本業を生かした複業ワーカーが主流
冒頭で日本企業は複業禁止が当たり前だったといったお話をしましたが、ひと昔前の世代の方はまだ複業=「悪いこと」といったイメージを持っている方が多いように思いますし、ダブルワークをする人は金銭的に困っている人か、とにかくお金を稼ぎたい人というように捉えてしまいがちです。
しかし、今の複業ワーカーの多くはお金のためではなく、自分が活躍できる場、認めてもらえる場を複数持ちたいと思っているようです。
それによって、充実感や幸せを会社ではないところで感じたいと考えているのではないでしょうか。
ですので、自分の本業を生かした複業を行う人がほとんどです。
例えば、私の知り合いのIT企業で働く30代の男性は土日にベンチャー企業の売上げ管理、経理管理システムの構築をサポートし、「若い企業の成長に協力できてうれしい」と言っています。
もちろん、結果、複業収入を得られることになりますが、お金を稼ぐことは二の次で、自分自身のやりがいや喜びのため、自分自身の成長のための複業というのが、現在の主流なのです。
とは言っても、複業は解禁されたばかりで、複業を禁止している企業はまだまだ全体の7割近くに達しています。
しかし、この数字はそう遠くない将来に逆転するのは目に見えています。
ので、まだ複業を認めていないところが多い中小企業のTOPは自社にとっての複業のメリットをしっかりと捉えた上で、複業を認めるかどうかについても一考を巡らせるべきだと思います。
中には「複業に力が入りすぎて本業が疎かになったら、大きな損失だ」と言うTOPもいると思います。
しかし、厳しいことを言わせていただければ「本業が疎かになるようであれば、そもそも本業に魅力がない」ということの証明であり、それを心配している時点で「自社の業務や社風に自信がない」と言っているようなものかもしれません。
これからは、本業でより活躍するために複業で活躍の場を広げる複業ワーカーが増えていく時代であり、優秀な人材を確保していくためにも複業解禁も必要不可欠な時代に入ってきているのです。
以上、何かのご参考になれば幸いです。