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ライフワークとしての学びを考えます。

わかっちゃいるけど、行動できない理由

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認知的不協和(迷う人).jpg

最近は、頻繁で破壊的なテクノロジーの進歩により、仕事のスキルの賞味期限が短くなっていることが、リサーチアドバイザリー会社・ガートナーの調査により分かっています。そのため採用では「応用可能な経験」と「自ら学べる人」が求められると言います。
一方で、現代社会ではすでに「定年」という概念も薄れつつあります。働かなくてはならない期間が長くなっているのです。

このような状況で長期間同じ仕事を続けることは過酷になります。

しかし、人が新しい仕事や生き方を選ぶことは、それほど簡単なことではありません。

突然ですが、友人の真理さんのお話しです。
真理さんは最近、夜景が見える都心のマンションを購入しました。
「小さくだけど東京タワーも見えるのよ!」と満足げです。ふとリビングを見わたすと、別の新築マンションのパンフレットが置いてありました。
「買ったばっかりなのに、なぜか他のマンションも気になるのよね...」
真理さんは会社員で、このマンションはかなり検討して購入したと言います。それなのになぜ他のマンションのパンフレットを見ているのでしょうか。不思議です。

これには理由があります。心理学者のフェスティンガーにより提唱された「認知的不協和の解消」と言われるものです。

真理さんは高価な買い物をして、自分の判断は正しかったのか不安を抱えています。
「高額だったが、良い買い物だった」という思いと、「もっと良い物件があったのではないか。間違いだったのではないか」という矛盾する2つの認知があり、「自分は正しい選択をした」という理由を探し出すことで、認知的不協和を解消しようとしているのです。

たとえばある会社員が、「会社も副業OKだ。独立に備えて起業しよう!」というように新たな決意をしたとします。一方で「本当にうまくいくかな」という不安もわき起こってきます。
「そういえば、本職が忙しくなりそう」とか、「土日は家族や友人と過ごす時間もほしい」とか、「初期費用もかかりそう」などと考え始めてしまい、結局行動しないということはよくあると思います。

新たな行動を決意しなくてはいけないことは、頭では十分わかっているのです。けれども、現状との矛盾を感じると認知的不協和を解消するために、積極的に新しい認知要素...つまり「自分は正しい選択をした」という理由を探しだそうとします。だから、やらない人は"やらない理由"で自分を納得させてしまい、いつまでたっても行動しないのです。

大人が成長するためには、新たな学びは必ず必要となります。人間が根源的に持つ認知的不協和を乗り越えて新しい学びを開始することが、大人の成長への可能性を広げるカギとなりそうです。

【参考文献】
「Harvard Business Review」『採用プロセスの再構築』(2021年6月号)ダイヤモンド社
L・フェスティンガー『認知的不協和の理論―社会心理学序説』末永俊郎監訳,誠信書房(1965年)

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