ボイトレや歌で集中なんかするとロクなことがない
よく「集中力が必要だ」と言われます。
そのため「私は集中力がないからだめなんだ」と思い悩む方も多いと思います。
かくいう私も、一つのことを始めると「あれも」「これも」気になりだすタイプで、集中力がないと思っていました。
ところが、歌やボイストレーニングのレッスンでは「集中なんかするとロクなことがない」のです。
声を出すためには、いかに体がゆるんでいるか、ということが大事になります。
体が引き締まりすぎていると、余計な部分が硬くなって、声が上手く出なくなるのです。
例えば、「エッジ」(またはボーカルフライ)と言われるトレーニング。
平井堅さんが、歌いだしのところで「あ”あ”あ”・・・」と声にならない声を出して始めるアレです。平井さんの場合は表現方法の一つでもありますが、これは、声帯から無駄な力みを取り除き、いかに声帯が必要最小限の力でお仕事をしてもらうかというためのものです。
人は「一生懸命声を出そう」と思うと、どうしても喉で頑張ってしまいますし、ほとんどの人はそうなっています。そのため、リラックスして、素直な状態で声帯をつかうことを声帯に教えなくてはいけません。
この「エッジ」、本当はとても簡単なのですが、大人の9割以上の人はちゃんと出来ません。
なぜなら、声を出す=喉で出す、というイメージが本能的に染み付いているからです。
エッジは「本当に声帯がリラックスしていないと出来ないもの」だからです。
声を出すときに喉で頑張っているうちに、喉の力みが取れなくなってしまい、エッジは上手にできなくなってしまっています。
このままでは、他のトレーニングを頑張ったとしても、最後は声帯の力みで良い声が出なくなってしまうのです。
エッジがなかなか上手く出来ない場合、できるだけ集中せずに、何か他のことを行いながらすると、いきなり出来るようになります。
なかなか出来ない方は、家族とおしゃべりしながらとか、新聞でも読みながらやってみましょう。
スポーツやダンスなどのアスリート系は、余分な力みをなくしながらも体幹がきゅっと引き締まっていくイメージですが、声の場合は体幹からゆったりと緩んで広がって行くイメージのほうが良いのです。
表情も、集中して険しい顔よりも、緩んだ顔の方向になっていきます。
顔も、口の中を出来るだけ開いている方向にしむけていくため、やわらかい顔になっていきます。
物を見るときも、ギュッと一点を集中して見るより、目の両端で見るようにするとより顔や頭部分もゆるんでいきます。
吉田美和さんは歌も上手いですが、いかにも歌顔という感じの顔です。
私は、声の仕事を始めるようになってから、ピアノだけやっているときより、ポワーンとした顔になって、眉間が広がっているような気がします。
発声をするときは、ぜひ、リラックスして行えるように気をつけてみてください。
★★参考記事★★
頑張って大きな声を出していても上手くならないその理由 知的で説得力のある響きを手に入れるビジネスボイストレーニング 『声帯攻略編』