オルタナティブ・ブログ > 大人の成長研究所 >

ライフワークとしての学びを考えます。

93歳奇跡の声

»

栗本尊子さんは、1920年大正9年生まれのメゾソプラノ歌手です。

その栗本さんが92歳のときに2012年7月19日ヤマハホール(東京)にて開催されたリサイタル。

こんなことは世界的に見ても皆無でしょう。
会場の隅々まで響き渡る明瞭な日本語、みずみずしい声。
そして、なんと言っても素晴らしいのは、日本の叙情歌を、言葉一つ一つに魂を込めて、切々とあふれんばかりの感動を持って歌っていらっしゃるところです。

一般的に小さく歌われることが多い皆が知っているような日本歌曲を、オペラのようにスケール大きくドラマティックに歌い上げて、「ああ、この曲はこんなに素晴らしい曲だったのか」と思わせるほどに胸に迫ります。

柳兼子の「兼子」というドキュメンタリーにて栗本さんがインタビューを受けているのを見ました。

栗本さんが日本歌曲を歌った第一回目のリサイタル、やはり当時「日本歌曲は大きく歌ってはだめだ。小さく歌うんだ」という風潮が音楽界にあったのだそうです。そこで今までのやり方にのっとって「小さな声」で歌いました。しかしリサイタルの後、聴いていたオペラ歌手でもあるご主人に言われたのだそうです。

「なぜ日本歌曲を小さな声で歌うんだ?日本歌曲を小さな声で歌うと誰も決めちゃいない。日本の歌だってオペラのように大きな声で堂々と歌え!それで言葉をはっきり出せば良いじゃないか。」

日本歌曲は歌いにくく、小さな声で歌わなければ言葉が発音しにくいという特徴は確かにあります。そのため、皆がどんどん小さく歌うようになってしまったのです。そこを、栗本さんは、大きな声で歌い、子音をしっかり発音して、内容も細かく表現する、そして日本歌曲ならではの「味わい」を出せれば問題なく出来ると思いました。

「いくら良い詩をとりあげても言葉が聞こえないんじゃしょうがない。大きな声で歌い、ホールの隅々まで、日本語の言葉が行き渡らなくては意味がない」
そう考えたのです。

「日本歌曲は掘り下げれば掘り下げるほど味がでてくる」
「外国語で歌っても反応がまったくないのが、はっきりと発音して日本歌曲を歌うと、お客様全員がわかってくださって、ものすごく反応があって喜んでくださるのがとても嬉しいんです」
という栗本さん。

あの声の素晴らしさは、よほど良い発声法を習得されていたのだと思いますが、それ以上に音楽に対する探究心と、お客様へ送り届けようとする強いお気持ちからでてくるものなのですね。
私も勉強を続けなければと思いました。

素晴らしい音楽を有り難うございました。

それでは、栗本さんのお声を聞いていただきましょう。

Comment(0)