音をひたすら伸ばし続けることで声がよくなる
歌はほとんどの方が苦労なく簡単に始めることができます。
楽器や楽器を置く場所の用意が必要ないからです。
誰でも簡単に始められるということであって、本当は簡単ではありません。「簡単」というイメージがつきすぎ、体の訓練をしないということでいえば業界最高ジャンルとなっています。
体の訓練が出来ていないので、息のコントロールが出来ず、息も続かない。
これをテンポのせいにしてしまうことが多いのですが、息のはき方に問題があるのです。
吹奏楽をやっている人はロングトーンのトレーニングを行います。
このロングトーン、歌の人はほとんど行いません。社会人合唱団に行くと、すぐに音階を歌い始めてしまい、ロングトーンをあまり重視していないところが多いのです。
「ロングトーン」とは同じ音を長く伸ばすことです。
管楽器の人は、ロングトーンを永久に続くのではないかと思うほど同じ音を何十分もずっと吹き続けています。曲の練習にいつ入るのかと思うほどです。
ロングトーンを行うと、体が出来てきて、息が長く続くようになり、歌うときにしょっちゅうブレスをしなくてすむようになり、息切れしなくなります。
よく息が続かないことを肺活量と思われる方がいますが、これは肺活量の問題ではありません。肺活量があっても、横隔膜を鍛えて息の流れを作らなくてはならないからです。
このとき、へそ下9センチくらいの場所を常に重点的に意識します。これは、「支え」と言われる場所です。へそ下の下腹を、息をはいても、すっても、常にパンと張り続けるようにして、息をはき続けます。
どんなに苦しくなっても「支え」から、外れてはいけません。
この訓練を行い続けることで、「支え」が出来てきて、体(横隔膜)も訓練されていきます。
ロングトーンで気をつけなくてはいけないことがあります。
ロングトーンの最後までしっかりと意識して終わることです。
これは、ロングトーンだけではなく、歌のフレーズや話すときの文章でも同じです。
普通の人は、もし「支え」を勉強したとしても、最後まで面倒見切れない人が多いのです。
フレーズの終わりをフワーンと投げっぱなしになってしまう。フレーズの終わりで支えがスッポ抜けているのです。
支えを使いながら「フェードアウト」するように終わる方法は、かなりの高等テクニックです。
体を使って終わることができない段階で、フェードアウトするような終わり方をしても、単に「息が足りないのね」と思われるだけです。息が足りないということは、体が使えていないということ。そうなると、歌は死んだことになります。
まずは、しっかりとロングトーンで体を作ってください。
一般的なロングトーンは「あ」や「お」などの母音で長く伸ばし続ける方法があります。
ただ、歌の場合、普通に発声しているだけでは、管楽器のように息をはくにあたっての「抵抗」がないので、なかなか横隔膜と支えを意識しにくい。そこが、歌がなかなか体を訓練しにくいという理由でもあります。
そこで、今回はロングトーンをしながら、横隔膜と支えを同時にトレーニングできる方法をご紹介いたしましょう。
★★★「横隔膜・ロングトーン」★★★
1、エプロンのようなもので、へそ下9センチくらいの場所をありえないくらいぎゅーっとしばる。(エプロンとしては結構低い位置です)
2、口を開け、息を吸う
3、口を閉じ、唇に針一本通るくらいの隙間を開けて、呼気の空気で頬と鼻の下をパンパンにふくらませて、同時に思い切り息をはきながら「ふぅ~~~」と発声する。口を開けてはだめですよ。声はあくまで軽く。唇の間で「ブシュ〜〜〜〜」と常に息が摩擦しながら流れているように。このときエプロンをお腹が押し返すようにする。
ポイント:声を出すときに呼気の量を加減する方がいますが、呼気の量を減らさないで。口がふくらみながら、「ブシュ〜〜〜」という摩擦音がなくならないように
4、伸ばし終るところは、息が充実した状態で「フンッ!」としっかり終わる。息が少なくなってフェードアウトする状態にならないように。
5、息をはききったら再び口を開けて1から繰り返す。
きちんと行えば結構苦しいです。
ただ、苦しいのは「ノドが苦しい」のではなく「横隔膜が苦しい」のが正しい。
このトレーニングは確実に「支え」と横隔膜をトレーニングできる方法です。