謝罪会見に必要な3つの要素「TRP」
最近、メディアで見る会見、特に企業の謝罪会見において、トップの準備と声の出し方次第で与える印象が大きく違うことを感じています。
私は、謝罪会見には基本3つの要素が大切だと考えます。
●謝罪会見に必要な3つの要素「TRP」
1、Transparency「透明性」
2、Respect「敬意」
3、Personality「人間性」
(3つの頭文字から「TRP」)
一般的な謝罪会見を見ていても、TRPが出来ていないケースが多いような気がします。
1「透明性」は、出来る限りの事実関係を把握し、可能な限り明確に説明すること。
2、「敬意」は、顧客、つまり社会に対する謝罪であると認識すること。質問者に対してアイコンタクトをし誠意を持って対応する。
3、1と2が出来る事で、間違いがあってもしっかり対応できるという信頼感を得られる。
問題が発生すると、トップも対応に追われて時間がなく、会見も急を要することのほうが多いのが通常です。そうなると、パニックで頭が真っ白なまま人前やマスコミの前に出てしまう。ご本人は寝てないのかもしれませんし、いろいろな思いが錯綜しているのかもしれません。落ち着いて対応するのはなかな出来る事ではありません。しかし、誠心誠意謝罪しているのに、ちょっとした声の出し方やコミュニケーションの仕方で信頼感が下がるのは残念です。
・焼き肉えびす:感情的になって声が甲高くなってしまいました。一生懸命なのですが甲高い声は信頼感に欠けてしまいます。
・吉兆:頭が真っ白になり呼吸が流れず声がつまり何も言えず、気持ちが動揺し、事実以外のことを言ってしまいました。お気持ちは分かりますがアイコンタクトをもう少しでもなさったほうが良かったと思います。
・バス会社事故:責任を感じておられるのは分かります。しかし響かない声でぼそぼそ話し、チラチラ書類を見ると、聞き手のほうはさらに不安になってしまいます。手を後ろに組んでいるのもあまりよろしくありません。
原発事故の東電の対応でも分かる通り、謝罪会見において組織を背負っての対応をすると、人は「まだ何か隠しているのではないか」と疑心暗鬼になります。
そもそも、人は、個人に共感する事はありますが、組織に共感する事はありません。組織の信頼を得るには、トップ個人が顧客や社会の共感を得て、信頼を積み重ねていくことが大切なのです。
「説得の時代」から「共感の時代」になっているのです。
最近、しっかりなさっていたのは餃子の「王将」です。
王将のトップは、前任者の不幸でパニックになっていたであろうことは想像に難しくない状況で、よく考え、しっかりと呼吸し、太く低い声を使い、腹を据えて会見を行いました。テレビを見ている視聴者、社員、マスコミも「共感」を覚え、3、個人の「人間性」が生きてきます。
GMリコール問題のとき新CEOのメアリー・バーラはこの3つをしっかりと行っていました。
1、事実関係をしっかりと把握し、事実以外のことを言わない。
2、アイコンタクトを行い質問者に対して誠実に敬意を持って対応する。腹の底から声を出して信頼感を持って答える
1、2、を行うことで、3の個人の人間性が信頼できるという印象を持たれます。
バーラの場合、CNNのインタビューを受けました。CNNは社員も見ています。つまり社外だけではなく、社内に向けての確実なメッセージでもあるのです。ここでしっかりした信頼感のあるメッセージを発信する事で、不安になっている社員の気持ちも安定し、会社がまとまり、「災い転じて福と成す」場合もあるのです。
こういう、困難なときこそ、会社が回復、業績アップの可能性も出てきます。
ピンチのときこそ、しっかり対応することで、その時は大変かもしれませんが、その後のチャンスが広がるのだと思います。
「TRP」は、大きな会見だけではありません。お客様に、また社内で、この「TRP」をしっかり行うことで、困難を良い方向に持っていくことは可能なのです。ぜひ参考にしてみてください。