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上司とケンカ上等 アントレプレナー精神が宿る味

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成城は、母校がある仙川に通うバスの乗り換え途中にある街。
学生時代は成城の「成城アルプス」や「マルメゾン」に寄るのが楽しみでした。

レッスンで上手く弾けたときなどは、成城アルプスで、お決まりの「モカロール」を買って帰ります。
一般的なロールケーキといえば、べったりとした生クリームが多く、ちょっと苦手。しかし、成城アルプスのモカロールは香り高いコーヒークリームがしっかりとしたバタークリームで、しかも塩味が効いているのが特徴です。他のケーキも、今流行のムースを多く使用したフワフワしたケーキとは違い、力強く、どっしりとした自信を感じます。

駅の反対側では「マルメゾン」。
こちらも、パリのような雰囲気の、指でつまめるかわいい小菓子が良いです。小さな中に繊細な味が表現されていて驚きました。

そのマルメゾンのパティシエ、大山栄蔵さん(64)のことが2014年5月2日日本経済新聞に書いてあったので、学生時代を懐かしく思い出したところです。
大山さんは、尾山台にある有名店「オーボンヴュータン」のオーナーシェフであり、日本洋菓子界のパイオニア的存在、河田勝彦さん(70)が、まだ言葉や差別が厳しかった時代渡仏し、立ち上げた「レアール会」メンバーの一人です。

河田さんは、現地の味の味とほど遠かった日本流の洋菓子界に本格的なフランス菓子を持ち込み、根付かせました。河田さんのところで修行したパティシエは200人以上にのぼります。

その中でも特に有名なのは、モンサンクレールの辻口博啓さん(47)でしょう。
今や、独自の和菓子も展開し、メディアにも多数出演する辻口さんは、いまやパティシエというよりは起業家という雰囲気です。

辻口さんはパティシエでありながら、どうしてこのようなアントレプレナー精神を宿しているのか?
その原点ともいえるストーリーが書かれていて、なるほどと思いました。

     ・・・・・(以下引用)

「辞めさせてもらいます」。修行を始めてわずか3ヶ月。辻口氏は河田氏の目の前で白衣を投げ捨てた。コンクールへの出場にこだわる辻口氏と、まだ早いと諭す河田氏。「50周年の記念大会が迫っていた。優勝すれば自分の店に一歩近づける」
辻口氏の実家は和菓子店だったが、18歳のときに倒産。店を再建するためにも一刻も早く地位を確立したかった。師匠とたもとを分かってまで参加した国内大会で優勝。97年には仏の大会を制し、ついに世界一の称号を手に入れた。
そんな元弟子を河田氏は「よく努力した。パティシエを世間にアピールした功績は大きい」と評価する。

     ・・・・・(以上引用)

実家の和菓子店が倒産し、自分の力のみで生きていかなくてはならなかった辻口さん。その気迫が、最年少でコンクール優勝を果たし、その後も数々の賞を総なめにしてきた原動力になったのだと感じます。

そして、師匠の河田さんも素晴らしい。
弟子とのコンクール争いに負けてもエールを送る懐の深さと胆力。この人物から、日本洋菓子界を引き継ぐ逸材がキラ星のごとく出てくるのも納得がいきます。

まだ誰も渡仏しなかった厳しい時代に修行に出た河田さんも、師匠と喧嘩をしてでもコンクールに出場した辻口さんも、強く自分の可能性を信じていた。
そこに、一流のアントレプレナー精神を見る思いがしました。


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