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大雪の日、東名高速道路通行止め 朝まで車中9時間の立ち往生体験記

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この件は、記事に書こうかどうか迷いました。
しかし、自分自身が同じ失敗を繰り返さないために、そして、他の方が運悪くこのような場面に巻き込まれてしまわないために、書き残しておこうと思います。

2014年2月14日(金)、関東地方は、2月8日に引き続き2度目の大雪に見舞われました。

14日、雪になることは分かっていたのですが、どうしても出かけなくてはならない仕事がありました。
前回8日のときは、可能な限りの予定をキャンセルしたりスケジュールをずらしたりして、交通機関に乗らないように家で待機していたのですが、意外に電車などは動いており、「雪でも結構動くのね。最近はしっかりしているのね」という思いがあったことと、朝の天気予報では「夕方から雨になり雪は8日よりは降らない」という予報を聞き、甘く見たことが、その日の大失敗につながったと思います。

22時。
浜松町付近からタクシーに乗りました。
車を持っていない私はあまり車に乗ることもありませんし、帰宅のために普段タクシーを利用することはほとんどありません。川崎インターのそばですから都心までの距離を考えると決してお安くありません。
以前「この人は人の時間を使うことに鈍感ですからもう一緒にお仕事はしないと思います」という記事を書いたときにタクシー利用についてのべましたが、時間を買うのだという認識で使っています。この日は疲れがあったことと、すぐに大事な仕事が控えていたこともあり、タクシーを使うことに決めました。
雪も少し雨模様に変わりつつあり、大丈夫そうだと判断してしまったのです。今思えばここが甘かったと思います。

首都高に入り、順調でした。
しかし、東名に入る直前「渋滞140分」と掲示板に出ていたので、運転手さんの「用賀インターより先は渋滞しているようですよ」との言葉で目的地の東名川崎インターまで行かずに用賀インターで降りてもらい国道246で帰ることにしました。
しかし、池尻を過ぎるあたりから、車はのろのろと渋滞が始まっていました。そして、すぐにほとんど動かなくなりました。
運転手さんは「これは相当凄い事故があったのでしょう」とおっしゃいましたが、それでもすぐに解消するとたかをくくっていたのです。

しかし、待てど暮らせどピクリとも動きません。そして雪は次第に激しく吹雪に変わってきました。周囲の車に雪がこんもりとつもりはじめ、樹氷林のようになっています。強風のため高速道路の壁に雪が張り付き冷凍庫のように変貌しはじめたころ、さすがに怖くなってきました。

「これでは多分一般道路も混雑しているはずだ、用賀で降りたら、田園都市線の用賀駅から電車を利用しよう」と考えました。
最終電車を調べたら24:53の電車があります。いくらなんでもこの時間前にはつくだろうと思っていました。しかし、その考えも甘かったのです。
車は少しも動きません。たまに数十メートル動き「あっ!やっと動き始めたかな?」と思っても、すぐに止まるという繰り返し。ネットで道路状況を調べたら、環八(環状八号線)も動いていないとのこと。どうも、途中で用賀から沼津まで通行止めになってしまい、東名高速に乗っていた車を用賀インターで下ろしているようです。そのときに、車4台ほどが立ち往生し、移動に時間がかかっているとのこと。いつまで続くんでしょう。

周囲の車を見て、あることに気がつき始めました。
意外とノーマルタイヤの方が多いのです。
これは朝の天気予報のせいもあるのでしょうか?それにしても多かったと思います。
案の定、湘南ナンバーでノーマルタイヤ車のバッテリーがきれてしまい、「路肩に避難したいけれど動かせない」とタクシーの運転手さんに助けを求めてきたドライバーさんがいました。
タクシーの方も大雪の中、路肩の雪をどけて、ハンドルの切り方まで指示しながらの移動です。ノーマルなのでタイヤが雪で空回りしてなかなか動きません。やっと路肩に移動した湘南のドライバーさんは、暖房が効かないせいかガタガタと震えていました。

そのとき、さらに不安がやってきました。
このタクシーも暖房が効かなくなったらどうしようか?ということです。暖房を入れて下さっていますが、それでも結構寒いのです。念のため乗る前にトイレはすませて来たものの、体が冷えてトイレが近くなったら困るなあと思い、私はたまたま持って来ていた携帯用のカイロを思い出しました。これから下りは用賀のインターも休憩所が一つもないのです。これを貼っておけば少しはしのげるのではないかと思いました。

時間も、ついに夜中の1時を越してしまいました。
もう電車も乗れません。腹をくくりました。
そのくらいの時間になると居眠り運転が増えてきます。ちょっと進み、またすぐに止まる、そして長時間動かない。私も以前は運転をしていたので分かるのですが、この連続は運転している人にとっては相当辛いもです。他の車が動いているのに取り残されているトラックが結構いて、運転席を見上げると、ハンドルに突っ伏して寝ています。居眠りで動かない車でのさらなる渋滞や、追突など事故につながるのではないかと心配になってきます。しかし、私も疲れと眠気で、運転手さんには申し訳ないなあと思いながらも、どうしてもウトウトと寝てしまいます。運転手さんも辛そうにしておられましたが、時折「おしぼり要りますか」と出して下さるお気遣いがとても心にしみました。

そうこうしているうちに空が白々と明けてきます。
ネットで検索すると、用賀から先は通行止めのまま。そして、環八も246もまったく動かないとのこと。これでは、用賀のインターを出てもさらに数時間動けそうもありません。下手をすると昼過ぎまでかかってしまうかもしれないと考えました。
朝の7時。渋滞に巻き込まれてなんと9時間が経過していました。
用賀のインターまであと350メートルになったところで、横を一人の女性が深い雪の中をツカツカと歩いて通り過ぎていきました。後ろ姿から「もうやってられないわよ!」という怒りのオーラを感じます。

ここは高速道路ですから本来車の外に出てはいけないのですが、もう私も限界にきていました。以前、用賀付近に住んでいたこともあり、土地勘はあります。これはここで降りて駅まで歩こうと決心しました。
「申し訳ありませんがここでおります」と言いますと、お世話になったタクシーの運転手さんも「そのほうがよろしいかと思います。これではこの先も動きません。お気をつけて」と心なしかホッとした表情をなさっていました。前の日に配っていたバレンタインの残りがありましたので、「昨日のうちにお渡ししたかったです。1日遅れですが・・・本当にお世話になり感謝しております」と言いながらお渡しすると嬉しそうに笑ってくださったのが最後でした。

雪は予想以上の深さで、15分のところを20分以上かかって用賀駅に到着。
新宿から名古屋までの長距離バスの方々も途中で降ろされたらしく、キャスター付きの鞄を転がしながら団体で歩いておられました。この雪の中さぞかし大変だったろうと思います。
用賀駅のトイレで顔を洗い目を覚まし、7時半からちょうど開店したパン屋さんで、温かいミネストローネを一口いただくと、初めてお腹がペコペコだったことに気がつきました。温かい食べ物が本当に有り難いなあと感じました。

地元の駅から家路につくときは、雨のため大雪が溶け出し、道路が洪水のようになっていました。これからの被害も心配です。

その日の夜も東名はまだ動かないとの情報で、あの運転手さんはどうしているだろうかと心残りです。
そして、今しがた調べたところによると、すでに2日目なのに、まだ通行止めとの情報が入ってきました。そして乗り捨てられた車によるさらなる渋滞が起こっているとのこと。

予想外の大雪で想定外だったのだと思います
twitterなどを見ていると未だに渋滞に巻き込まれて20時間が経過している方の情報などを見ると、想像を絶します。流通関係の方々も大変な思いをされているでしょう。

高速道路は、Uターンが出来ない、そして頻繁に休憩所がない、途中で降りることができない、この当たり前のことに改めて気がつかされました。だからタクシーの方はまず最初に「高速を使いますか?」とお尋ねになるのですね。

自分のミスでもあるのですが、このような貴重な体験をさせていただいたことも、一つの大事な意味があると思っています。
リスクマネージメント、リスク回避、などと考えているのに、肝心なときに失敗をしてしまい、あらためて自分の「リスク体質」を思い知り、改めなければいけないと感じた大雪でした。


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