74分の判断 ヒットする仕事とはどこから生まれるのか
パソコンを、あれほど愛用していたThinkPadからMacに切り替えました。
ThinkPadのどこがいいかというと、あのキータッチ感触です。
あの感触が他のパソコンにはない心地よさで、文章を書くときずいぶん助けてもらいました。
どうしてもこのキータッチが気に入ってしまい、なかなか切り替えられないでいました。
Macはやはりキータッチの感触が浅く、しばらくは違和感があり、慣れるまでは一時期文章に誤字脱字が多くなりました。
ただ、使っているうちに、少しずつMacの良さが分かってきました。
それは、魂です。
アートを感じることです。
生き物ではありませんが、作り手の哲学が伝わってくるような気がします。
お会いしたこともない作り手の香りがする。
使い手にこういう気持ちにさせるほどのものに出会うと、人間は自らの作品を作ることが、この世に生まれてきたことの生きるに足る理由のような気がしてきます。
お客さんに届けられるようにパッケージされた商品を作ることも難しいことです。
しかし、それはあくまで商品。
作り手がアートの感性を持って、魂を感じさせるまでに昇華された商品。
それが「作品」なのだと思います。
ソニーの元会長、大賀典雄さんが、CDを74分に設定した有名な話しがあります。
なぜ、74分などという中途半端な時間なのか。
それは「ベートーヴェンの『第九』が全部入るようにしなくてはならない」という理由です
最初は「切りのいい60分で」という強い案もあったようですが、大賀さんが親交のあったヘルベルト・フォン・カラヤンの提言もあり74分にしたのだそうです。
もし他の経営者だったら、74分という時間を確信を持って押し切ることができたでしょうか。
芸大出身のバリトン歌手であり、一人の芸術家である大賀さんならではの判断だと思います。
アップルのスティーブ・ジョブズも、「作品」を作るときは、芸術的な感性を持つ人たちを使って、アートを深く反映させていたそうです。
これからの仕事は、作り手にさらにアートの感性が必要になってくると感じています。