腹式呼吸による発声の勘違い 息をはいて発声するときお腹をへこませてはいけない
ボイストレーニングをするとき、腹式呼吸のトレーニングは大抵セットでついてきます。 「はい、息をすって~お腹をふくらませて~、息をはいて~お腹をへこませて~」 というものです。 これは腹式呼吸の方法としては正しいです。
でも、私は発声でこの腹式呼吸のトレーニングをしたことがありません。
なぜなら、お腹をへこませてしまうと、とたんに声は力を失います。
それに、お腹を出したりへこませたりしながらコントロールして声を出そうとするのは少し難しいです。
息をはいて発声するときは、できるだけお腹は張った状態を維持するのが正解です。なれてしまえばこちらの方が単純で簡単ですし、確実に声がよくなります。
具体的には、お腹の横隔膜をトレーニングし、横隔膜をしっかりと使うことです。
横隔膜は肺の下にあるドーム型をしている、呼吸をつかさどるインナーマッスル(深層筋肉)です。横隔膜は、普段無意識に動いています。普段の呼吸ではそれでも間に合いますが、良い声を出したいと思ったら、それでは足りません。それではどうやったら横隔膜がしっかりと力強く使えるのでしょうか。
ポイントは、息をはくときもお腹が軽くパンと張った状態であれば横隔膜が使えている目安になります。
肋骨(肺や内臓を囲っている骨)の左右一番下の骨のすぐ下あたりを両手をグーにして、グイーッと押してみてください。 (グーの手は手の甲が下側になるようにしてください。甲が上側になると肩が内側に入り、猫背になってしまいます) このとき、押すことばかりに夢中になって背中が猫背になったりしないように。姿勢は肋骨を持ち上げるような感覚です。 手のグーは、肋骨に触れるか触れない程度のギリギリのところでよいと思います。 全くの初心者であれば、このとき、壁に背中をつけて立つと身体が安定します。
そして、グイーッと押したグーを、お腹が抵抗して「パン」と張り返すようなつもりで。 この状態を、発声中は常に維持するようにします。
お腹に日本の「サラシ」を巻いているような状態をイメージしてみてください。→参照記事:日本の伝統「サラシ」が発声にも効果
それでは試しにやってみましょう。
「お腹に手を当てながら、大きくゆっくりと息をすって、お腹をパンと張り、息をはくときにも、お腹はムリに引っ込めず、手を張り返すつもり呼吸します。お腹がヘナヘナにならないように。」
これは発声のときも同じ。 声を出しているときは、お腹が手を張り返している状態です。
横隔膜をより意識できるようにし、より鍛えるための訓練をご紹介しましょう。 サイレントでどこでも行えます。
★★横隔膜ブレス★★
1、肋骨のすぐ下あたりに手を当てる
2、顎を下げて口を開け、思い切り息を吸う
ポイント:肩が上がらないように。お腹が風船のように張る感じを手で確認すること。
3、口を閉じ、唇に針一本通るくらいの隙間を開けて頬と鼻の下がパンパンにふくらましながら5秒息をはく。
ポイント:頬と鼻の下がリスがエサを口に入れているようにパンパンにふくらませる。ここが遠慮がちになっては効果がありません。口の前にティッシューをかざすと地面と平行になびくくらいの呼気です。お腹はできるだけ張った状態を維持します。
4、再び口を開けて2から繰り返す。
*しっかり出来ていれば5回繰り返すと結構キツイですので頑張ってください。