半沢直樹の堺雅人がなぜ良かったのか 「ジェスチャーを入れながら話しましょう」の勘違い
最近、ドラマ「半沢直樹」シリーズが大変な話題となりました。
私も、毎週楽しみに観ていた一人です。
池井戸潤さんの書籍も良いのですが、今まで本のドラマ化というのは、思い入れと期待が大きいだけにがっかりすることも多かったものでした。
しかし、今回の「半沢直樹」は、俳優陣の配役と脚本の見事さから、「ドラマならでは」の良さが全面に出て、成功するまれなパターンだったと思います。
私が、このドラマで特に素晴らしいと思い、また勉強になったのは、堺雅人さんの演技です。
境さんは、「南極料理人」での自然体の演技が光っていたのを覚えていて、力のある役者さんだと思っていました。
そして、今回の半沢演じる境さんの演技は、「南極料理人」とはまた違った、新たな境地を開いたともいえる演技だったと思います。
半沢の台詞は大変長いものが多く、境さんは、それをほとんどテイク1で撮り終えたと言います。
これは、自分が撮影をしてみるとわかるのですが、決められた台詞をカメラに向かって話し、それを1回で終えるということは大変な集中力を必要とします。
そして、私がさらに凄いと思ったのは、堺さんがほとんど体を動かさずに台詞をしゃべり続けるということです。
実は、これは大変に難しい。
ボイストレーニングのレッスンで、良い声で発声していただくために、講演やプレゼンテーションに向けてのトレーニングにおいては、身振りや手振りをつけていただくようにお伝えします。
なぜか。
それは、身振りがついたほうが、しゃべりやすいからです。
動きをつけるのは難しいのでは、と思えるかもしれませんが、実際は逆で、体が動くことで感情や台詞が出やすくなります。
動かさないほうが難しいといっても、もちろん、極度の緊張で体が固まってしまっているのは別です。しかし、そういうときというのは、ご経験があるかもしれませんが、大抵は脳もフリーズし真っ白になってしまって言葉が出なくなることも多いのです。だから、そういうときほど無理にでも体を動かすようにすると、しゃべりやすくなるります。
そういう理由で、私は、動きをつけていただくことをおすすめしています。
ただ、いくらジェスチャーを入れるとしゃべりやすいからと言って、あまりにせわしなく動くと、アグレッシブな印象を与えることもありますが、ビジネスのシーンでは逆に落ち着きがないと思われたり、言葉が軽くなってしまいますので注意が必要です。
体を動かすことが出来るようになって、次の段階は、できるだけ動かさないで言葉だけで表現することも出来るようにすることです。
そのほうが、深い説得力を持って話しが相手に伝わります。
堺さんのような長い台詞を、体を動かさないでしゃべり続けるのは、よく勉強し、台詞を消化し、自分のものとしていないとできません。
私は、そういう意味でも、半沢直樹の堺さんは素晴らしいと思いました。
テレビでアナウンサーの方でも、ニュースを読むときに、文章ごとに頭や体をコックンコックンとリズムをとるよう振り続ける方が結構いらっしゃいます。
プロでもこうなってしまうほどですから、動かさないで話すことがいかに難しいかお分かりなると思います。
これを、誰でもできる方法があります。
それは「横隔膜」を使うことです。
台詞に集中することももちろんですが、ぜひ「横隔膜」をしっかり使ってください。
横隔膜がしっかりと使えていれば、最小限の手の動きぐらいで、無駄に体を動かすことは自然としなくなります。
横隔膜が使えていないときほど、余計なところに力が入っていたり、体の芯がブレています。
そのためにも、「横隔膜ブレス」で日々の少しの時間でもあれば、横隔膜のインナーマッスルを鍛えるようにしておくことがいざというときに自分を助けてくれます。
★★横隔膜ブレス★★
1、肋骨のすぐ下あたりに手を当てる
2、顎を下げて口を開け、思い切り息を吸う
ポイント:肩が上がらないように。お腹が風船のように張る感じを手で確認すること。
3、口を閉じ、唇に針一本通るくらいの隙間を開けて頬と鼻の下がパンパンにふくらましながら5秒息をはく。
ポイント:頬と鼻の下がリスがエサを口に入れているようにパンパンにふくらませる。ここが遠慮がちになっては効果がありません。口の前にティッシューをかざすと地面と平行になびくくらいの呼気です。お腹はできるだけ張った状態を維持します。
4、再び口を開けて2から繰り返す。
*しっかり出来ていれば5回繰り返すと結構キツイですので頑張ってください。