話し声と本番の声が違う
歌声が素晴らしければさぞかし話し声も良いのかと思ってしまいます
そのまま良い声で話す方もいれば、意外なこともあります。
私が大好きなソプラノ(女性の高音を担当する)のナタリー・デセイ。
彼女の歌を聴いたときは、なんという美しい声をしているのかと思いました。
それが、インタビューなどで普通にしゃべり始めると、意外に低い声でハスキーなのです。歌だけ聴いているときは、もっと甲高い声で話すのかと想像していただけに驚きました。
スター歌手にありがちな傾向で、彼女も気難しいと言われていたのですが、そのよくしゃべる低音の声が、気さくな感じを醸し出していて、かえって好感度が増しました。
オペラのセリフは良い声で発声しているので、普段とはスイッチの入れ方を変えているのでしょう。
それは私もよく分かります。
歌うときやスピーチや講演のときと、普段のしゃべり声があまりに違うので、本番前にお話しさせていただいた方々には大抵驚かれます。
本番の声は、それなりに横隔膜のスイッチを入れて話していますが、普段は意図的にスイッチをオフにしているからです。
陸上大会で100メートルを走るのと、普段気楽に歩いているのと、筋肉の使い方が違うのと同じです
さて、ソプラノのナタリー・デセイですが、ヴェルディ生誕200周年記念に先駆けて2011年にフランス・エクサンプロヴァンス音楽祭で上演されたオペラの舞台裏をドキュメンタリーにした映画『椿姫ができるまで』が28日より公開されます。
Newsweek10月1日号に映画の記事が掲載されていました。
この映画は、オペラはあまり馴染みのない人でもオペラの楽しみ方が分かるように作られているのだそうです。
オペラは演技が大事。
「オペラは演技が大袈裟な印象があるけど、本当は演技がうまくないとダメ。実際は演技が下手なオペラ歌手も多いけど、それならコンサートで歌えばいいと私は思う」
最後、主役のヴィオレッタが倒れて命尽きるシーン。倒れ方の練習を延々と繰り返すシーンがあります。
「フランス語ではリハーサルを『レペティシオン』と言う。この言葉は『リピート』の意味もある。あのシーンは私の仕事そのもの。ひたすらレペティシオンする」
デセイが、華やかな表舞台とは違う姿も見せてくれる貴重な映画。
楽しみです。