分からないことを聞いているのに「さきほどから言っているように」と言われると出来の悪い生徒の烙印を押されるようで質問できなくなる
山小屋などで、登山愛好家の方々が集まるような場に行くと、専門用語が飛び交い、何を話しているのか分からなくなることがよくあります。
最初は「縦走」と言われて「縦に走るって何?」のレベルでしたから、「ガレ場」「キレット(実は日本語)」「トラバース」「コル」「カール」「ツェルト」「テン場」・・・・。 と、業界用語が多く、よくよく考えると分かるのですが、最初はなにを言っているのかさっぱりわかりませんでした。
私はこういうとき、すぐに「『ガレ場』って何ですか?」と聞いてしまいます。大抵の方は、「初めてじゃあ分からないですよね」と、笑いながら楽しそうに教えてくださいますし、良い人が多く「こんなことも知らないのか」などとおっしゃる方は一人もいませんでした。質問することでかえってよいコミュニケーションのきっかけにもなります。
最近はすぐにググれば分かるので、便利な世の中ですが、私が入っているソフトバンクが通じない場所にいくと途端に「異邦人」となります。 (山奥にいくとドコモは通じてもソフトバンクは通じないところ多いです)
これはクラシックの世界でも同様で、知らないうちに自分たちだけが通じる業界言葉で会話をしていていることが多いと思います。普段からよく話しているので「当たり前」になってしまうのです。
そうなると、音楽家同士の集まりに参加した初めての人は、蚊帳の外で寂しい思いをすることになりますから、私は積極的に「これはこういう意味ですよ」と説明ながら話すことにしています。もしご存知だったとしても、そのほうが安心だと思うからです。
このブログは、音楽専門の方々対象ではありません。 少しでも多くの方々に、音楽の楽しさや奥深さを知ってもらうために書いています。 だから、専門用語はなるべく書かないようにしているのです。 もしどうしても使わないとならないときは、カッコつきにして注釈を入れています。
そんなことを考えていたら、2013年9月28日日経新聞の『実践マナー塾』で専門用語の使用について書かれていましたので引用します。
・・・・・(以下引用)・・・・・
(不動産購入の説明を受けているときに説明なく「ダンシン」と言われ)業界の専門家ではない私には聞き取れませんでした。毎日その言葉に慣れてしまうと気が緩み、部外者に対する緊張感や配慮が欠けてしまうのでしょうか。 もしこのようなことになった場合は、まず謙虚に反省して、質問してもらったことに感謝し「失礼いたしました。ダンシンとは・・・」と丁寧に説明してください。話しての勢いにのまれてその場で質問できない人も大勢いるからです。
また間違っても心の中で「なんだそんなことも知らないの・・・」とバカにしないこと。思いは必ず言葉の端や態度に出てしまうもので、相手は敏感にその「上から目線」に気付きます。 不動産購入のときも「よろしいですか(分かりましたかッ)」と念を押され、出来の悪い生徒の気分にさせられたのでした。 専門用語、仲間内だけで通じる業界用語、友達用語は、外部の人には使わないことです。丁寧に解説する親切心や配慮を忘れないようにお互いに気をつけましょう。
・・・・・(以上引用)・・・・
趣味の世界ならまだしも、高額な金額が取引される不動産購入や、ともすれば命がかかわる医療関係の場では、大事なことだと思います。
専門用語や業界用語が分からなくて、気がつかないうちに何度も同じ質問をしているらしく、「さきほどから言っているように(何度も同じ説明をさせるな)」と言われると、泣きたくなってしまいます。もう一度質問しようという気持ちがなくなってしまうこともあります。
そういう場でなくとも、やはり普段より専門用語の呪縛にかかりやすい専門家は、常に気をつけていく必要があるのだと思っています。