「何が良いのか分からない」「いくらするのか分からない」伝統のベールをはぎとり時代に適応する
9月19日のシェフ列伝に、京都吉兆嵐山本店総料理長であり、第三代目主人に当たる、徳岡邦夫さんが出演していらっしゃいました。
徳岡さんは、バブル崩壊後、料亭が次々と消えていく中、生き残りをかけて新しい料亭の世界に踏み出した方です。
料亭と言えば、「何が良いのか分からない」「いくらするのか分からない」というベールの中に包まれた存在。日本人でありながら、フランス料理に行くより敷居の高いものに感じられる雰囲気がします。 そんな料亭を、本来の「おもてなしの心」は変わらずに、今の時代の流れやスピードに合ったものにと考えました。
例えば、京野菜。 納得のいく素材を自ら出向いて探して歩きました。 また、和食には日本酒が合うという強い思いは持ちながらも、ワインを合わせることにもトライしています。 そこから生まれた料理の一つ、「パルミジャーノと茶碗蒸し」は、和と洋を融合したもの。 世界を意識したものでした。
徳岡さんは「こだわるのはダメ」「こうあっちゃいけないと思うのはダメ」と言います。「伝統は適応」だとおっしゃるのです。 カメレオンのように色を変えて適応しないと生き続けて行けないのです。
私も、ボイストレーニングの方法を自分が習ったとき「背中から翼が生えたように」とか「頭のてっぺんから声を出すように」「腹から声を出すように」「目を吊り上げて」「丹田を意識」など、「~な感じ」という表現が多くて、困ったことがあります。先生がやっているのを見よう見まねで覚えて口伝えしていくものなのです。これはこれで素晴らしい世界なのですが、一般の方々からみると、やはりベールに包まれた世界。 自分が同じように人に伝えようと思っても、あまりにも暗黙知の部分が多すぎて、これでは一般の方々に伝わりません。 しかし、この発声法は、どんな人でも声が変化し、良い声になる本物なのです。自分だけのものにしておくのはもったいないと感じていました。 誰かが、どんな方でも伝わるように、分かりやすく言葉で説明しなければならないと思いました。 私は分かりやすく伝える方法については、かなりの時間をかけて考えています。
昨日も、発声法についての講演を行ってきましたが、とにかく「わかりやすく」「ロジカルに言葉で説明」することを心がけました。
「相手の心を思い心をくだく」という徳岡さんの言葉が忘れられません。
しゃべれなかった自分が、ここまで話せるようになったのは、このボイストレーニングのおかげです。 声が出ることでどんなにか自分は救われたでしょうか。 同じように困っている人はたくさんいらっしゃいます。 少しでもお役に立てるよう、常にわかりやすく、諦めずにお伝えてしていきたいですね。