30年も消えない心の傷
チェリストの原田禎夫さんの半生を綴った記事が、2013年9月17日より「人間発見」にて連載されていました。
その中で、小澤征爾さんから、サイトウ・キネンオーケストラに誘われたときの原田さん気持ちが書かれていて印象深かったのです。
・・・・・(以下引用)・・・・・
サイトウ・キネンは僕や小澤さんの恩師である斎藤秀雄先生の名前が由来で、かつて一緒に学んだ仲間がたくさんいました。僕は先生にずっと厳しく怒られ続けて、心の傷が長く消えませんでした。 だから「サイトウ」という名前がついているオーケストラに参加したら、昔を思い出して傷口が開くんじゃないか。実は恐怖もあった。けれど行ってみれば、小澤さんやほかの仲間たちは自然にあたたかく受け入れてくれた。全く怖がることはなかったのです。
・・・・・(以上引用)・・・・・
桐朋学園は、齋藤秀雄先生が創設した音楽学校で、厳しいスパルタ教育が伝統になっているところです。 私の恩師は斎藤先生の指揮のお弟子さんでもあった方ですし、ピアノは井口愛子先生という、これもまた厳しいレッスンをなさることで有名な方でした。 しかし、幸運なことに、一度もスパルタ教育をされたことはありません。
それどころか、こんな未熟な私に対しても「私も一緒に勉強しているのです」と常におっしゃってくださいました。 今にしてみれば、なんというありがたいことなのだろうかと感じます。
この先生とのご縁は今でも続いています。
原田さんほどの方でも、学生時代からの心の傷が約30年も消えなかったということになります。
しかし、傷を持ったとしても、良い仲間が救ってくれた。 ベートーヴェンやマーラーが時を超えて癒してくれた。
そういうことを聞くと、音楽の素晴らしさを改めて感じます。