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ライフワークとしての学びを考えます。

ネットの世界で消耗する 最後の巨匠

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最近CDは聴かずにyoutubeばかり見ています。
 
youtubeはどなたかがほとんど無償であげてくださっているものだと思うのですが、有り難いと思います。
 
一昔前の巨匠の演奏が映像付きで残っているのを見ると、もっと前に見ておきたかったと感じます。
 
ピアノの場合は、特に手の動きが大事になります。音でしか聴いたことがなかった巨匠が動いているところを初めて見たのもyoutubeです。こんな動きで弾いていたのか、と新鮮の発見がいくつもあるのです。
 
また、ドキュメンタリー番組で、音楽はもとより、その人生観まで語られているのを見ると、これもまた大変参考になります。
 
こんなに人生において素晴らしい情報を提供してくれるyoutubeですが、しかし、一方では、様々な問題もあると聞きます。
 
ピアニストのクリスティアン・ツィマーマンは、現代において「最後の巨匠」とまでいわれる人です。
その演奏は、修行僧のような追求とともに、透徹され深く、今や誰も踏み込めないような領域に達していると私は感じています。

 
ツィマーマンは完璧主義者です。
 
ピアノは自分に合ったものを持ち込みます。ピアノを作ることも出来る人で、スイスのバーゼルの自宅には、手作りのピアノも置いてあり、ご自分でピアノに手を加えたりするのです。
 
そして、録音をなかなか出してくれません。
録音しても、完璧主義者ゆえ、本人が承知しないのです。
 
それもこれも、自分の追及する音を完璧に表現するため。
 
ツィマーマンは、若い頃から「自分が気に入った作品を皆さんに伝えたい。その作品の素晴らしさを誰よりも信じているのです。」と語っています。
自分のイメージする世界を完璧に表現できなくては、世に出したくない。という強い意志を感じます。
 
しかし、そんななかなか録音を出さないツィマーマンの演奏を、リサイタルで不法に盗撮し、録音や動画をアップしてしまうファンがいるのです。
このことで、ツィマーマンはレコード会社とトラブルになり、契約は打ち切られ、訴訟問題となりました。
そのことで心を痛めているのです。
そして最近のリサイタルも、理由はわかりませんが、プログラムが変更になっていました。
 
このインターネットの世の中で、自分の演奏がどこでどのように上げられているのか分からないというもの怖いですが、私はその恩恵を被っている側からすると複雑な気持ちがします。
 
ツィマーマンは、ピアニストとして最後の巨匠であり、人類の宝であると思います。
音楽とは関係ないところで消耗してほしくない・・・。そして、これからピアニストとして一番脂の乗り切ってきた時期に、より深い世界を追求していただきたいと、ただ祈るばかりです。

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