「夕方になると声がかれてくる」「声が持たない」 発声体力をつける方法
ボイストレーニングの受講生の方が講演をするときは、可能なかぎり観にいく行くようにしています。
それは、レッスンで出来ていても、本番では出来ないことが多いからです。
ピアノもそうでした。
師匠は、どんなにお忙しくても、私が演奏をするときは会場までいらしてくださっていました。
「人前では違う。人前でやって出来るかどうかだ。」とおっしゃり、演奏直後は誰よりも早く舞台ソデにしらしてくださり、短く的確なアドバイスをしてくださるのです。それが、とても有り難かったのです。
講演も同じではないかと思います。
ボイストレーニングのレッスンで、1対1で出来ていても、たくさんの人前に出ると、いつも出来るものも出来なくなることが多くあります。
レッスンだけではカバーできないものがあるのです。
私がよく感じることは、皆さん、緊張感から体力を消耗してしまい。1時間や1時間半の講演で、最後まで声が持ちません。大抵の方は、30分過ぎると声に力がなくなるのです。
そうすると、うわべだけの発声になってしまい、聞き手の心に届かなくなります。
こうなると、話し手が聴衆の方を引きつけていられなくなることから、全体の集中力も切れてきて、一気に落ち着きの無いゆるんだ空気感になります。
「ああ、もう離れたな」ということがよく分かります。
同じ方で、同じ内容を話していても、調子がよく、声が持っている間は、そういうことがないのです。
この様子を見ていると、内容も大事ですが、「人前で表現する」わけですから、話している声ももっと大事であるということがよく分かります。
例えば、本や論文であれば、内容だけで勝負できます。
でも、「それでは、そんな素晴らしいことを書かれているご本人に話してもらいましょうか」となると、書くだけでなく表現方法がもう一段階上がるので難しいのです。
「最近は良いマイクがあるから」と思っていても、「声の力」というのはマイクを通しても伝わります。人の心に伝えるためには、ただ物理的に聞こえればよい、というわけにはいかないのです。
頻繁に数多くの講演をこなせば、体力もついてきますが、すべての人がそういうわけにはいきません。
また、講演だけでなく、普段の仕事でも「夕方になると声がかれてくる」という方も、発声体力が足りないことが一つの原因です。
普段より、ボイストレーニングによって体力をつけておけば、いざというときに体力が持って、集中力も維持できます。
私がおすすめしている「横隔膜トレーニング・シリーズ」は、負荷をかけながら発声に必要な横隔膜のインナーマッスルを鍛えていくものです。
長時間大きな声を出さなきくても、体力・持久力をつけるには大変有利なトレーニングとなります。
参考までに、シリーズの一つ「横隔膜トレーニング・ブレス」をご紹介しましょう。
★★横隔膜トレーニング・ブレス★★
1、肋骨のすぐ下あたりに手を当てる
2、顎を下げて口を開け、思い切り息を吸う
ポイント:肩が上がらないように。お腹が風船のように張る感じを手で確認すること。
3、口を閉じ、唇に針一本通るくらいの隙間を開けて頬と鼻の下がパンパンにふくらましながら5秒息をはき、6秒目に当てた手でお腹をグイッと押して止める。(なれたら手を使わなくても止められるようになります)
ポイント:頬と鼻の下がリスがエサを口に入れているようにパンパンにふくらませる。ここが遠慮がちになっては効果がありません。口の前にティッシューをかざすと地面と平行になびくくらいの呼気です。お腹はできるだけ張った状態を維持します。
4、再び口を開けて2から繰り返す。
このトレーニング、体力をつけたい方は、一日10回行ってください。