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脳から人を支配する 猫に宿る小さな戦略家

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子供の頃、どうしても猫を飼いたかったのですが、捨て猫を拾ってくると父親が「『トキソ』に感染する。絶対ダメだ。」と言って飼うことを許してくれませんでした。かわいい猫をまたトボトボと捨てられていた場所に戻してくる、という繰り返しでした。
そのときの『トキソ』という言葉が記憶に残っていました。しかし、最近、「ナショナルジオグラフィック」の記事を読み『トキソ』とはトキソプラズマという小さな生物のことを言うのだと知りました。

     ・・・・・(以下引用)・・・・・
 
チェコの進化生物学者ヤロスラフ・フレグル(Jaroslav Flegr)氏は、大胆な主張によってここ1年ほどメディアの注目を集めている。トキソプラズマというありふれた寄生虫が、われわれの脳を“コントロール”しているというのだ。
トキソプラズマは通常はネコに寄生する。巧みな戦略をとることで知られ、ネコからネコへ感染するのにネズミを媒介とし、寄生したネズミの行動を変化させてネコに食べられやすくすることで新たな宿主に乗り移る。
ネコに食べられやすくするため、トキソプラズマがネズミに引き起こす行動の変化は、反応時間が遅くなる、無気力になる、危険を恐れなくなるというものだが、このような変化はトキソプラズマに寄生された人間にも現れることをフレグル氏は発見した。しかし、トキソプラズマがどのような方法でそうした変化をもたらしているのか、最近までほとんど解明されていなかった。
(中略)
15年間、公衆衛生データによる実験と分析を行った結果、フレグル氏はトキソプラズマと人間の行動にいくつかの驚くべき関連性があることを突き止めた。トキソプラズマに感染した人は交通事故に遭う確率が2倍以上高まるが、これはトキソプラズマが反応時間を遅くするためだとフレグル氏は考えている。さらに、感染者は統合失調症を発症しやすくなるという。トキソプラズマ感染は自殺率の上昇に関連しているという別の研究チームの報告もある。
 
     ・・・・・(以上引用)・・・・・

この記事によると、トキソプラズマという小さな生物は、ネズミが猫に捕獲されやすいようにし、猫が人間に好まれるようにし、そして人間が猫を守ろうとするようにコントロールすることで、自分が生き延びる仕組みを作っていたということになります。
なんという戦略家であり、したたかな生物です。
 
「戦略とは自分が弱いことを知ること」と教えていただいたことがあります。
トキソプラズマは、自分が弱いことを知っており、そして生き延びる戦略を実行したのではないでしょうか。
 
こいうことを知ると、回りを見渡しても、一見力が弱くみえるものを軽く扱ってはいけないと思わされます。
 
だから、挫折や苦難を味わい、自分は弱い、もう何も出来ない、と思っていても、そこがチャンスなのです。
普通は、「自分が弱い」と思っていてもエゴが働き、認めたがらないものなのです。虚勢をはってしまうものなのです。挫折とは弱さ認めたがらない自分に「お前は弱いのだよ」と誰かがわざわざ教えてくれているのだと思えます。

自分が弱いと分かり、認めること。
それは大きな1歩だということです。
 
自分は弱いと分かった。ではどうするか。
そこから、戦略が始まるのだと思います。
 

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