「いい女」は声が低い
最近、女性キャスターで低い声の人が増えているように思えます。私の好きなNHKの某女史も以前より声を低くしていらっしゃいますね。
そんなことを感じているときに、メリル・ストリープ主演、映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』をApple TVで観ました。
サッチャーは、大臣時代「甲高い声で”がなる”な」と多くの議員から非難されていました。
気の強いサッチャーは『内容が大事』と反発していましたが、同僚の議員とコンサルタントからの助言により「声の出し方を変える」ことにするのです。
それは「低い声」でした。
「どこのおばさんが話しているの?と思われないかしら。」と心配するサッチャーに、「今の君は上流階級の裕福な奥様にしか見えない。庶民出身の利点を生かして、国民の視点に立てる立場を生かすんだ。そしてトップになる。」というアドバイスのもと、ボイストレーニングを行うことを決意します。映画の中でサッチャーは、ボイストレーナーについて低い声を出す訓練していました。
映画では、「ポルタメント」という、高いところから低いところに音をずり下げるトレーニングを行っていました。
これは、「音痴ではない 音程を調節するための筋肉に気が付いていないだけ 筋肉を開発する簡単なボイストレーニング」 という記事にも書いたのですが、ポルタメントは、思い通りの音程を作るための筋肉を開発するために有効な方法です。
サッチャーの場合、「低い音を自在に扱う」という音感が必要でした。「だたなんとなく出してみたら低い声になっちゃった」では安定しません。「今、私はこの程度の低い音を発声している」ということをコントロールして発声しなくてはならないのです。
またもう一つこのトレーニングの良い点は、「自分のよく響く音を維持しながら音を下げる訓練になる」ということです。
低い音はとてもよいのですが「響きにくい」のが難点です。普通、ただ音を下げただけでは、音の響きまで下がってしまい、くぐもって聞き取りにくくなります。人間の耳とは、高い音の方をキャッチしやすいのです。
例えば、オーケストラでも低い音の楽器から優先して演奏するのが原則です。高い音というのは、低い音と同じボリュームで演奏していても、人間の耳には圧倒的に強く聞こえます。そのために、主旋律が音の高いパートにあることが多い。
高い音のパートが優先して演奏すると、とてもきつく、硬く聞こえる。それは悪い意味で強烈に聞こえてしまうのです。そうすると聴いている聴衆はとても疲れてしまいます。
低い音の楽器から優先的に演奏して「低い響きを前に出す」と、豊かな音楽に聞こえるというわけです。だから、一流のオーケストラというのは低音楽器に重厚感があります。
高い声の方が響く方の場合は、まずは高い声で響きをつかんでそのまま低い音にスライドさせていく。高い響きを維持しながらスライドさせることで、低い音でも響きを落とさないで発声することができるようになります。私自身も、高い声は響くのですが、低い声だと響きが落ちてしまうので、ポルタメントのトレーニングをよく行っています。
そうすると、良いオーケストラのように、低い音でも「響きが前に出る」という声になるのです。
「ただ低い声」の方はたくさんいますが、ただ低いだけではだめで、響きがないと人の心に届かないのです。
★ポルタメントボイストレーニング
リラックスしてあくびをするように「あ~ぁ」と高い声から低い声にずり下げる。「も~ぉ」で牛の鳴き声のように行ってもよい。
サッチャーは、「低い声」をマスターし、国民の信頼を得て、英国初の女性首相にまでのぼりつめます。
「イギリスの未来のために」という強い思いだけはあった。話しに内容もあった。
しかし、サッチャーほどの人でも、甲高い声で”がなる”ばかりでは、せっかくの思いも空回りして周囲には聞こえてしまうです。それは大変にもったいないことです。
最近、メディアを見ていても、声が低くてデキる「いい女」が増えているような気がします。
アイドルでも、以前のように高い声を作らずに、低い声で話している人が多いですね。
ぜひ、響きのある低い声をマスターしてください。
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