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ライフワークとしての学びを考えます。

実際戦わなくとも 運気を引き寄せ 勝利に導くのは選手やメンバーではなく、ここに立つしぶとい人

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何かに挑戦する。しかし最悪の結果になってしまうこともある。
そのとき、どんな言葉を語るか。
 
「アポロ13」という映画を観ました。
 
1970年、アポロ13号は月に向かう途中に酸素タンクが爆発。電気、水、生命維持装置なども被害を受け、飛行士の命にもかかわる大事故が起こりました。アポロ13号は月面着陸を断念。いかに少ないエネルギーで地球に無事帰還するかに挑みます。
 
温かい人間性を持ちながら冷静沈着な船長のジム・ラヴェルを、名優トム・ハンクスが見事に演じていました。
 
厳しい選考を潜り抜け月に行くことが出来る飛行士は3名。そのうちの一人、ケンが「風疹」の診断を受け、メンバーから外されることになります。ケンは「自分は風疹ではない。」と納得がいきません。しかし、最終判断を任されていたラヴェルは「私の判断だ」と告げ、逃げずに引き受けるのです。
 
メンバーを変更するか、計画を断念するか、どちらかの選択の中で悩みぬいたラヴェルの覚悟を決めた表情から、ケンはリーダーの苦しみを感じたのだと思います。そこで「あなたは基準に外れたので戦力外」と割り切れば楽になる。しかしそこを割り切らずに持ち続ける胆力。そしてその気持ちは伝わるのです。
 
その後ケンは、彼らが地球に帰還するための重要な任務に就き、懸命なバックアップで大きく貢献することになります。
 
組織で何かを行うとなれば、確かな判断力で、誰かを選び、誰かを選ばないという状況もある。もし、その方が選ばれなかったとしても成長の可能性を持つ一人の人間として遇するという重さを引き受ける。
決然と部下をさばくかっこいいリーダーの姿ではなく、そこには、選考に漏れたメンバーに残心を持つリーダーの姿を見ることができます。
 
この映画では、もう一人素晴らしいリーダーがいます。
 
事故による深刻な空気感の中、
「NASAが迎えた最大の危機だ!」
と言うスタッフに対して、エド・ハリス演じる主任管制官ジーン・クランツが、間髪いれずに
「言葉を返すようだが栄光の時だ」
と言う場面があります。
 
リーダーとして、「絶対に生きて生還させる。彼らはやり遂げてくれる」と無条件に信じていることが、その言葉と間合いから感じられ、周囲のスタッフ達を落ち着かせ、鼓舞するという瞬間です。
 
最悪の状況においても、最後の最後まで信じ抜き、諦めない。
この局面で「最高の結果になる」と言い切る。
起こることに意味を見いだし、プラスの発想をするということこそ本当のしぶとさ。
 
そして映画のクライマックス。大気圏突入となり、3分間交信が途絶え、その後復活しなければ失敗というとき。3分を越えても交信が復活しない。しかし、確信に満ちたまなざしで佇むクランツ。
 
そのとき、なんと4分を越えて交信が復活し、地球生還成功。
 
元サッカー全日本監督の岡田武史さんは、
「勝利への執着心を持ち続けることです。運の要素が強いといわれるPK戦においてもリーダーの勝利への執着が強い方が勝つ」
ソフィアバンク代表の田坂広志さんは
「リーダーの心が定まれば、何もしなくともすでにチームの雰囲気が変わっている。そんな不思議なことが起こる。」
と、両氏はおっしゃいます。
 
リーダーがどんな心境であろうと、大気圏突入するのは飛行士たち。
しかし、実際に戦うのは自分ではなくても、運気を引き寄せ、勝利に導くのはすべてリーダーの覚悟が定まっているかどうかなのだと感じます。
 
クランツの言ったとおり、メンバーが無事帰還する結果になることで、アメリカ全体、いや、世界に勇気を与え、人類の歴史に残る栄光の日となります。
 
この映画、彼らが生還するのは分かっているものの、やはり最後は感動してしまいます。
どんなに優秀な機械も故障する。
しかし、人間は自ら困難を乗り越える力を持つのです。
 
素晴らしい映画を有り難うございました。

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