なぜ子役は大成しないのか 仕事の戦略とは何か
早いうちに才能を伸ばされる方というのは、後で成長が止まることが多いのはよくあることです。
そういう人を見ると、一般的に「あの人は10代で完成されていた」などと評されます。
演劇の世界でも「天才子役は大成しない」と言われています。
しかし、それは「早いうちに才能が完成されたから」ではないと考えています。
次から次へと素晴らしい仕事をなさる方や、その道の本当のプロフェッショナルというのは、一見そう見えなくとも、実際お会いしてお話ししてみると共通するものを感じます。
謙虚である。
私の尊敬するあるピアニストは、演奏会の後いつも反省なさっています。もちろんお客さんにはそういう姿は見せませんが、落ち込んでいるともいえます。
完璧でこんなに素晴らしいのだから、もっと自信満々でもいいのでは?と思ってしまうほどなのです。
なぜなのでしょうか。
それは、世界最高のものを知っているからなのだと思います。
私たちが想像しているよりはるか高みを目指されている。
だから、自分がどこにいるのか、よく見えておられる。
武田鉄也さんが、ソプラノの中丸三千繪さんとお仕事をしたときに感じたことをおっしゃっていました。
「あの人たちは、すぐに世界に直結するから大変だ」
いくら素晴らしくても、「マリア・カラスはこうだったね」と言われてしまう。
自信があることは悪いことではないのですが、人生の早いうちに成功体験を味わってしまうと、それが当たり前になってしまう場合があります。それがその人の成長を止まらせてしまうのではないかと思います。
もちろん、子役出身でも、ジョディ・フォスターのように素晴らしい女優、監督となっておられる方もいますが、彼女も大きな挫折を味わって今のポジションに来ています。
自分だけは特別に才能があって、運が良い、と思ってしまう。
そうなってしまうと、仕事に戦略がなくなります。
それはどんな方でも同じです。仕事において入念な準備をせず丸腰で行ってしまう。工夫がない。それでも大丈夫だと思ってしまう。
自分の立ち位置が見え、弱者であるということが認識できたときに、初めてそこから何をするべきか、という戦略が決まるのではないでしょうか。
だから、本当に力のある人は謙虚であるのだと思います。