自分にしかできない魅力的なスタイルを身につけるためには 真似ること
家電量販店でエアコンを買いました。
そのとき接客してくださったのは、あるメーカーの営業の方だったのですが、そのセールストークに興味を持ちました。
様々なところで経験を積んだかなりのベテランと見受けられました。
冗談も言いながら、馴れ馴れしいざっくばらんな話っぷりは、リズム感が良く親密さを感じさせ、まったく嫌味はありません。
毒蝮三太夫さんも口の悪いスタイルで有名ですが、言われている方々はなぜか喜んでいる。
なぜか?
毒舌の裏では、ぬくもりを持ちながら、実に細やかに気配りをしている。それを相手はちゃんと感じているのです。
その呼吸とバランス感覚は、表面だけすぐに真似をしようとしても出来るものではないと思いました。
もし、そのスタイルだけ真似をしたらば、お客さんを怒らせてしまうことでしょう。
名ピアニストと言われる人たち、往年の大巨匠たちは大変個性的です。
特に、ホロビッツのピアノは悪魔的で、一度聴いたら頭から離れないほどです。しかし「ホロビッツだけは真似をしてはいけない」と言われます。
私も、黙って真似をしていたら、すぐにバレてしまい、師匠に「ホロビッツの他も聴いてごらんなさい」と言われてしまったことがあります。
指揮者のY先生は、「師匠の指揮法に憧れて弟子入りした。でも、ハーフで背も高くて腕も長い師匠とは体格も違う。最初は指揮棒も同じようにして真似をしていたのだけど、やっぱりしっくりこなかった。基本は先生の流れだけど、今は自分の方法でやっている。小澤征爾だって、最初は斎藤秀雄先生の”叩き(たたき)”が多かったけれど、今はずいぶん変わってきている」とよく話していました。。
「真似る」は「まねぶ(学ぶ)」とも言われています。
それでは何を学ぶのか?
私は、失敗するために学ぶのだと思っています。
私淑する上司がいればその方のもとで、できるだけ同じ空気を吸う。
そのスタイルを研究し、まずは真似をして、失敗しながら、あるときは指摘を受けながら、自分と対比させることで成長していく。
真似をしたくなるような魅力的なスタイルであればあるほど個性的で難しい。
でも、失敗しないと、自分との違いが分からないのです。
個性は、その葛藤の中で、磨かれていきます。
最近、自由に個性を育てる、とよく言われます。
それは、自由自在に育つということではないように思えます。狭き門から入り、精神的に窮屈な思いをしてもやるべきことを行い、成長していくことでしか、唯一無二の個性は発見できないのだと思っています。