部下が力を発揮するために 上司が部下に対する最高の贈り物とは
マーケットの世界では、新しいものや個性的なもの、また画期的なものは、いくら素晴らしくてもなかなか売れないのだそうです。
それはクラシック音楽の世界でも似たようなことがあります。
特に日本の有名で歴史ある組織ほど、その門は硬く閉ざされている。類稀なる個性というものが、日本組織ではなかなか通用しない。
しかし、そこを飛び越えて活躍する方もいます。
指揮者の広上淳一さん。
彼の指揮はとても音楽的であり、個性的。オーケストラから見事に有機的な響きを作り出します。そして、指揮台の動きは遠くから見ていても、すぐに広上さんだと分かるほどなのです。
以前、広上さんのコンサートに一緒に行こうとしていた友人が急な用事でキャンセルになり、代わりにクラシック音楽にあまり馴染みのない方とご一緒したことがありました。
その方は、音楽よりも広上さんの動きをみて驚き、演奏後は言葉を失っていました。
初めてだったので仕方ないかも、と思いましたが、彼の指揮はそれほど天才的で独創的なのです。
そんな広上さんが指揮者として一本立ちするには、あるきっかけがありました。
2012年2月4日日本経済新聞の交友抄に、広上さんの記事が掲載されていました。
広上さんは音大を卒業したあと、指揮者の外山雄三さんの助手として名古屋の楽団に雇われます。
・・・・・(以下引用)・・・・・
楽員に認められず1年でクビに。茅ヶ崎の実家に引っ込み意気消沈していた。半年ほどたったある日(外山雄三)先生から電話を頂いた。日本であまり告知されていないコンクールを見つけ、わざわざ教えてくださったのだ。先生の推薦状を手に生まれて初めて海外へ。絶対に敗退できないと思った。
「おまえの指揮は、正直で思い切っていて西洋的。向こうの連中は評価すると思った」優勝を報告すると、先生はこうおっしゃった。
「今だから言えるけど、日本にいたら潰されていたんじゃないか」とも。
自分に自信がなくて、海外なんて夢だと思っていた。でも「俺は認めている」という言葉に励まされ、それから多くのことに挑戦できた。
・・・・・(以上引用)・・・・・
外山雄三さんの上司としての素晴らしさ。
それは広上さんの可能性を心から信じていたことにあります。
だからこそ、広上さんも自分の力を最高に出し切ることができた。
困難は信じる思いによって乗り切ることができるのです。
師匠が弟子に、または上司が部下に対する最高の贈り物とは、「部下の可能性を心から信じること」ではないかと思っています。