肩の力を抜きながら一生懸命しているようにすることができるか
12月も半ばを過ぎ、日本独特の年末行事となっている、ベートーヴェンの「第九」が連日のように演奏されています。
オーケストラは一年で一番忙しいとき。昼一回、夜一回と、一日二回公演も珍しくはありません。
楽団員の方にうかがったことがあるのですが、やはりベートーヴェンともなると演奏する方も気力や体力が半端ではなく、大変疲れるそうです。
天才指揮者、カルロス・クライバーと演奏したオーケストラは、「カルロスと演奏したあとは3ヶ月の休みがほしいくらいだね」と言っていたそうですから、本来100%以上の力を出し切って演奏すれば、毎日良い物を出し続けることはとても難しいことだと思います。
しかし、プロともなると、一回演奏会のあと、数ヶ月の休みなどということは許されないのが実情なのです。どんな状況でも、出せる最高のものを提供していかなくてはならないのですね。
2011年12月17日、合唱団コール・リバティストの練習がありました。
この日はマエストロ(本番指揮者)稽古で、最初にブストの宗教曲を歌いました。
宗教曲は、聖書の言葉に音楽をつけたもの。教会で修道士が日常歌っていたものが基本にあります。
朝歌って、昼歌って、また夜歌う。
ある種の「行」のように歌っていると、それが普通になってきます。
楽ではないけれども、適度に肩の力を抜きながら、密度の濃いものができるようになっていくのですね。
この作品、実は2009年から持っています。かなり長い期間歌っているにもかかわらず、どうしても一生懸命になってしまいます。宗教曲の場合はベートーヴェンとは違います。修道士たちが、神に仕え、日常歌っているように演奏しなければならないのです。ここが宗教曲の難しいところだと思います
マエストロは「僕が昔、東混(東京混声合唱団)にいた頃は、一日本番三回なんていうのもあった。地方巡業で学校の音楽教室の場合、朝9時に一回、13時に一回、15時に一回。これで毎回”一球入魂”みたいな演奏を続けていたら身体が持ちません。」
「何度もそのような経験をすると、最初は疲れますが、”肩の力を抜きながら一生懸命しているように見える”演奏がだんだん出来るようになっていくんですね。プロはそういうの上手いですよ」
とおっしゃいます。
だから、宗教曲をもらったときは、たまに一生懸命練習するだけではなく、一日三回くらいに分けて少しずつ練習すると良いそうです。それを続けると「日常感」が出てくると言います。
お勤めがあると難しいので、一日一回でもいいのではないではないかと私は思います。
この日は他に中田喜直作曲の「海の構図」より「神話の巨人」を練習しました。
ものすごくかっこいい曲なので、いつか立派に歌えるようになるといいですね。