音楽だけに夢中になってはいけない
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「私が音楽に一生懸命になったのは45歳からです。あなたの歳の頃には、まだ音楽だけに夢中になってはいけませんよ」
これは指揮者の岩城宏之さんに、当時81歳であるピアノの巨匠ルービンシュタインが言った言葉です。
ルービンシュタイン自身、人生における放蕩の限りをつくし、人生の酸いも甘いもかぎ分けたような人。
もちろん素晴らしいピアノを弾くのですから練習もしたであろうと思われるのですが、
「ピアノの練習は演奏会本番でする。」というくらい、すぐに何でも弾けたようです。
頭の中にありとあらゆる引き出しを持ち、そこからその日に演奏する作品を取り出して弾いているような感じなのでしょう。
音楽は、人間の感情の一切を封じ込めるもの。
私には、ルービンシュタインの言葉から、「ピアノにだけ向かっていてはいけませんよ」という声が聴こえてきます。
ピアノが生きているわけではない。
いくら作曲家が素晴らしかろうと、そこにある楽譜は生きているわけではない。
音と音の間からは切れば血のでるような人間の一切の感情を感じ取り封じ込めるのが演奏家。そんなことも分からずやっていた自分は技術で表面だけお綺麗にしているだけ。それでは単なる虚構。
人との業に苦しみ、情に心が軋むような思いを味わう。
人間として成長するために、逃げてはいけないことなのだと思います。
自分がなぜご縁あって音楽をしてきたか、なぜこの世に命をいただいたのか。そして、なぜこの場に座っているのか。理由があるのだと思っています。
人間として学ばなければならないこと。
まだまだ自分自身に永遠に問い続けなくてはならないと思っています。
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