八千草薫さん主演のオペラ「蝶々夫人」
八千草薫さん。
日本の誇る大女優です。
最近、楽団員さんから、八千草薫さん主演、1955年の日伊合作映画、プッチーニ作曲、オペラ「蝶々夫人」のDVDをお貸しいただき観る機会がありました。
まず驚いたのは、歌より何より、八千草さんの綺麗さ。
私は最近の八千草さんしか知らなかったのですが、当時23歳で宝塚に在籍中。
その可憐さと、次元の高い品格に驚きました。
歌はイタリアの歌手が歌い、八千草さんは歌詞を覚えて口を動かしているだけなのですが、まるでご本人が歌っているように自然そのもの。
演技も素晴らしく、訴えるような目の表情がなんともいえない、哀しさやいじらしさを感じます。日本舞踊も学ばれているのでしょう。腰の据わった舞い、着物の着こなしやさばき方も見事でした。
昔は若くてもこんな女優さんがいらしたのですね。
「蝶々夫人」はプッチーニのオペラの中でも、メロディの美しさが際立つ作品です。
特に日本的な情緒あふれる旋律にうっとりとしてしまいます。
春に桜の花見に行って、甘美かつ雅な雰囲気に浸る。そのような気持ちでしょうか。
第一幕最後で歌われる、蝶々さんとピンカートンとの愛の二重唱など、本物のオペラでは歌には満足できても、ビジュアルでは「何か違う」と思え、ついつい冷めてしまうこともあったのですが、これぞ映画の良さでなのでしょう。日本人の八千草さんを見て、初めてしっくりいった思いでした。
有名な蝶々さんのアリア、「ある晴れた日に」も、本職のソプラノ歌手が歌えば、やはり「私の歌を聴かせましょう」というパワーを感じるものです。しかし、八千草さんの奥ゆかしく憂いをおびた表現が、良き日本の美しさを感じさせ、本来こうあるべきではないかという新鮮な感動がありました。
良く見ると、結婚式の場面で芸者たちがお祝いのために集うのですが、その中に若き日の、淀かおるさん、寿美花代さん、鳳八千代さん、など豪華な顔ぶれが見られるのですね。
「オペラは何となく退屈でつまらない」と感じている方がいたら、まずは、このようなDVDからお入りになることもお勧めします。
演技も歌も本物で、ぜひ観ていただきたい映画です。
それでは、本日はソプラノ歌手、ミレッラ・フレーニの蝶々さんで「ある晴れた日に」を聴いていただくことにいたしましょう。