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直感は過たない

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いつもと変わらない様子なのに直感的に「何かが違う」と思いました。
ある合唱団の演奏会で舞台に上がるとき、ピアニストとして指揮者の後から歩いていたときのことです。
 
舞台の中央まで歩くのにほんの5秒ほど。
指揮者の歩調と後姿から、もしかして曲を間違えるのではないか・・・といやな予感がしました。
 
最初の曲は、合唱団のアカペラから始まる静かな曲。2曲目は、ピアノの伴奏から始まる激しい曲でした。
同じ作曲家で小品を何曲も並べているちょっと間違えやすいプログラム構成だったので、出る前に確認しておけばよかったと思いました。
 
お辞儀が終わって椅子に座り、すぐ横にいた女声のリーダーにアイコンタクトをとったら、「分かった」と目で頷きます。
 
予想通りでした。
指揮者は、私の方を向き、激しい勢いで強い音を振りはじめたのです。
 
そのとたん、合唱団から静かなアカペラの響きが・・・・。
 
指揮者は音を出しません。だから、もし間違えてもほとんどの人は分からなかったと思います。しかし、演奏する方が察していなかったら、音楽はバランスを失ってしまったでしょう。
そのときの指揮者の「しまった!」という顔は今でも忘れられません。
出だしがアカペラなので、ピアノが音をあげることになっていたのですが、その時間もありませんでした。
 
生の演奏会。こんなこともあるのですよね。
 
しかし、以前ある指揮者と話して笑っていたことが現実になるとは思いませんでした。
というのは、山田一雄さんという素晴らしい指揮者が、コンサートでベートーヴェンの「田園」、そして次が「運命」というプログラムの順番を間違えたという話しです。
 
山田さんは、振っている姿も音楽そのものの方ですから、指揮台まで、もうまるで「運命」を振るかのように情熱的に歩いていきます。それを見たコンサートマスターが察して、「田園」だからねとオーケストラに一瞬で伝えたそうです。これも、ほんの1~2秒の間に感じたことだと思います。
「ジャジャジャジャーン!」と出るために、激しく振り始めたとたん、明るくのどかな「ラッタタ、タ~ラララッラ♪」と田園の第一楽章。
これは有名な話ですが、大指揮者でもこういうことがあるのです。
 
「何かが違う」ということのほかに、大きなことを「よし、これはやってみよう」と直感で意思決定するということもありますね。
 
直感とは何もないところから突然わいてくるものではありません。
自分で意識できないような速さで今までの経験や情報を脳が処理し、計算して導き出した答えなのです。
だから、常にそのことを考えている人や、経験や知識の多い人ほどその直感は的確なのです。
「自分は鈍くて直感力がないから・・・」と思っている場合が多いのですが、実はそうではないのですね。
 
直感は過たない。
私はそのように感じています。

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