ゆっくり練習すれば上手くなる
ゴルファーの宮里藍さんが、信じられないくらいゆっくりとしたスピードでスイングの練習をしているのを見たことがあります。
スポーツで、「ゆっくり練習することで上達する」というトレーニング方法がありますが、音楽でも同じことが言えます。
「ゆっくり」というと簡単に思えるかもしれませんが、本当にちゃんとゆっくりの練習を行おうとすると意外に難しいものです。
ゆっくり練習するという方法は大きくみて2段階あります。
1、初期の段階で作品をやりはじめたばかりに行うゆっくり
個人差はありますが、新しい作品を始めたばかりのときは譜面を読むことに時間がかかります。なるべく間違った動きを筋肉が覚えないように確実にゆっくり弾いてください。
すぐ作品をイメージどおりに演奏したくて速く弾きたくなる気持ちは分かりますが、間違えた弾き方で何度も繰り返すと、間違った動きが身についてしまい、後にそれを直すことに時間とエネルギーを使用することになります。間違えないで弾けるテンポが今の実力に合った速さであると思ってください。
あわてなくても大丈夫。正しい動きが身につけば必ず本来のテンポでも演奏できるようになります。
2、ある程度曲が身について作品を仕上げていうこうとする段階のゆっくり
音色を作るためと、作品をさらに深く仕上げていくためのゆっくりがあります。
音色を作る場合、鍵盤の降りる速さを音色によって変えてください。
極めてゆっくり降ろす場合、素早いタッチをする場合など、様々の音色をパレットから絵の具を選ぶように、感情と連動させて動かします。
音色を選ぶ作業は速く弾いていてはなかなかできるようになりません。
まず、音楽に対する感情や「どういう音色にしたいか」というイメージを作ってから、次に鍵盤に伝えるプロセスが、最初は素早くいかないからです。ゆっくり吟味しながら行ってください。
そして、大体弾けるようになったら、無理矢理本来のテンポで演奏してみてください。
しかし、初期の段階では間違った動きを記憶させないようにとしながら、なぜいきなり間違えてもいいから速く弾くのか?
ゆっくり練習で注意しなければならないのは、「ゆっくり」というとすべての筋肉までゆっくり動かしてしまうことです。
単にゆっくり動かしている筋肉と、本来のスピードで演奏する筋肉の動きは全く違うのです。実際に演奏会を行うときは、本来のスピードの動きに持っていくわけですよね。
速いときは、どんな動きなのか、どんな世界なのか。これを体験するのです。
速い動きを体で覚えたら、次はまたゆっくりに戻します。
そのときのポイントは、ピアノの場合で言うと、ゆっくり動きながらタッチだけは速い動きのときの状態で練習する。
歌の場合は、ゆっくり歌っているのですが、声帯の反応や息は速いときの状態に近づける。
本来のテンポで演奏してみて、その後ゆっくり練習すると、筋肉の記憶が残っている状態でゆっくりの練習ができるようになるのです。
「ゆっくり練習しなさい」と言われても、単純にゆっくりなわけではないところが少し難しいところですね。
ゆっくり練習は奥が深いといつも思います。