腹が据わるとは「間合い」である
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天下無双と言われるような剣の達人は、真剣を用いなくても、真剣で向かってくる相手に対して勝ったといいます。
「腹が据わっている」とはどういうことか?
危険に対して鈍感なのが腹が据わっているとはいいません。
例えば、相手との距離が1メートルだとする。
相手の刀が1メートル1センチならば、すっと避けなければならない。
相手の刀が99センチだとすると、そのまま動かなくてもよい。
達人はその間合いの取り方を読んでいる。だから心が定まり腹が据わっている状態になるのだと言います。
音楽も同じだと思いました。
音楽に入り込みすぎて溺れてしまうのは良い演奏とはいえません。
だからといって冷静すぎても、音楽で一番大事な感情が伝わってこない。
超一流の演奏家は、この距離感、まさに「間合い」を極めておられるのです。
ウィルヘルム・バックハウス(1884~1969年)というピアノの巨匠がかつていました。
私は、録音でしかその演奏を聴いたことはありませんが、ベートーヴェンのソナタを演奏したら、いまだに彼を超える人はいないと思います。
バックハウスは普通に舞台に現れると、まるでコタツに座ってミカンでもむくように、ピアノを弾き始めたといいます。
しかし、その演奏は人間の感情の奥深くまでえぐりとるような音楽。
まさに天下無双。
つい一昨昨日のこと。人との「間合い」も同じように奥の深いものであるのだと、コーチングをなさっている方と話しました。
私も、人との間合いを間違え、何度も失敗し、痛い思いをしました。怖い経験もしました。
音楽も人間も、やはり間合い。
これでいい、ということはないと思いますが、ひたすら行じ続けていかなくてはならないのですね。
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