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ライフワークとしての音楽を考えていきます

合唱は電車に乗るようなもの 皆がいるからこそ安い運賃でも移動できる

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「合唱とは満員電車に乗るようなもの」、合唱界の巨匠、T先生の言葉です
 
「合唱は社会や人生にも通じるのではないかと思う。満員電車に乗ると苦しいが、皆がいるからこそ、安い運賃でも移動できるのだ。」
 
「ただ周囲と心や声を合わせるだけでは足りないのです。自分が周囲にどのような影響を与え、どうすれば周囲も自分もより高まるかを一人一人が積極的に考える。」
 
合唱は音だけの世界ではないのですね。隣人がいるからこそ合唱ができる。その人たちと人生の大切な時間をご同行しているということなのです。
 
T先生の合唱クラスで思い出深いことがありました。
私の母校では、ピアノ科のみの合唱クラスが必修のカリキュラムに設けられています。
ほとんどの人は声楽の心得もありません。小さい頃からピアノだけやっている専門人たちです。だから、実際は「なんでこんなクラスが必修科目なの?時間の無駄。この時間にピアノをさらいたい」と思う人はとても多かったのです。
 
しかし、そんなピアノ科の生徒に、なぜ学校がそのようなクラスを設けたか?
 
それは小澤征爾さんの先生でもある、サイトウキネンオーケストラの名前にもなっている創立者の齋藤秀雄さんの考えにあります。
 
「音楽は一人ではできない。特に、ピアノは一人で演奏できる世界に住んでいる。そんなピアニストにも絶対アンサンブルする心得が必要だ」
 
あるとき、友人がコンクールに通過し、セミファイナルの日とT先生クラスの合唱発表会の日が重なりました。その人にとって予選から勝ち抜いて最終選考に残るべく大切な日。人生を決めるとさえ思えます。
友人は、「私の人生が大事。コンクールに出るのが当たり前だ」と思い、T先生に何の説明もせずに勝手に発表会を休んでコンクールに出ました。
するとT先生は「あなたには単位を与えることはできない」ときっぱりと言ったのです。
 
もちろん、将来専門家としてやっていく、また、就職して一人前の社会人としてやっていく・・・そういうことを考えたらば、単位を与えないのは当たり前のことかもしれません。しかし学生たちは、困惑していました。
 
「満員電車」のお考え。合唱を本気でやってみて、先生のおっしゃりたかったことが今やっと分かってきたような気がしています。
 
合唱をしに来ている人たちには、ただ合唱をするだけではなく、合唱から、音楽から、何か大切なものをつかんでほしいと思っています。つかむのは一瞬だから。一瞬を逃さないでほしい。
 
自分たちの演奏で、お客さんたちの目がキラキラと輝く様を想像してみてください。
そんな幸せなことが合唱はできるのですね。
 
「隣人がいればこそ。」
自分も日々振り返りながら、常に心にとどめておきたいと思っています。

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