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ライフワークとしての学びを考えます。

神のように超越している指揮者

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神だ、と思いました。
 
名前も知らない指揮者でした。
CDの演奏でここまで震撼させられたことはありません。
私は、聴いたあと魂を抜かれたように呆然としてしまいました。
 
ロシアの指揮者ムラヴィンスキー(1906~1988)。
 
何もしていないように見えて、深くえぐられた表現。そして厳しく壮絶な音。さっさと行ってしまうテンポなのにハートに突き刺さってくる。その純粋で凝縮された音楽に圧倒されてしまいました。
 
それからとにかく聴きあさりました。
モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、チャイコフスキー、ショスタコーヴィッチ・・・
 
ムラヴィンスキーのリハーサル風景をVTRで見たことがありますが、ここからして超越していました。
 
シューベルトの交響曲第7番「未完成」。
第一楽章の冒頭、弦楽器がトレモロ(音を小刻みに繰り返す。伴奏部分。)で始まるところでした。
 
最初の最初、「タカタカタカタカタ♪」で、「もう一度」と止めます。
 
また「タカタカタカタカタ♪」で「もう一度」
 
そしてまた「タカタカタカタカタ♪」で「もう一度」と止めます。
 
・・・・これが何回繰り返されたでしょうか。
 
このようなリハーサルをしていたら、練習日程がいくらあっても足りません。商業主義では不可能な練習だと思いました。
 
音を聴けば分かりますが、オーケストラ全員が一流のプロなのです。それが指揮者の指示でだまって何度も繰り返している。しかもリハーサルからしてものすごい高い完成度なのです。
 
ムラヴィンスキーのリハーサルは、まるでピアニストが繰り返しさらうような練習をオーケストラに課し、どんな細かいところも一切の妥協がありません。
一人一人が一過言もっているような100人のプロ集団、オーケストラが指揮者の手元にある楽器のように全てがパーフェクトにコントロールされている。
統率力とはなんだろう?これはもしかしたら統率力なんてものではないのではないか?もしかしたら、「ソ連」という国だからこそ為しえた音楽だったのだろうか?
 
でもしかし、ここにあるのは純然とそびえたつ孤高の音楽、切れば熱い血が流れるような情熱的な音楽そのものなのです。
 
それでは、今日はムラヴィンスキーの指揮で、グリンカ作曲「ルスランとリュドミラ」序曲を聴いていただくことにしましょう。
 
誰しも一度は聴いたことがある有名曲。一糸乱れないアンサンブルと目もくらむようなスピード感、そしてムラヴィンスキーの妥協ない鋼鉄のような意志。そんじょそこらの演奏とは次元が違うことを感じられると思います。

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