息のしない巨大な怪獣
今、オルガンってあまり身近にないかもしれませんね。
数年前、ローランドさんの後援で演奏会を行ったことがあります。
そのとき、ローランド製のオルガンをお貸しいただき、人生初のオルガン演奏を行いました。
ピアノと同じ鍵盤楽器ではありますが、足のペダルもありますし、ストップと呼ばれる音色を選択する装置もついています。弾いている途中でストップを素早く操作しなくてはならず、なれないと手間取って演奏に影響が出てしまいます。
知り合いのオルガニストを紹介してもらい、教会に出向いて稽古しました。
ストップや、ペダル、それに何段にもなった鍵盤など、ピアノとの違いはいろいろとありますが、一番の違いは音の出方だと思いました。
鍵盤を抑えた瞬間に、スイッチを押したように一瞬で音が立ち上がり、減衰することがありません。
ピアノの場合、微妙なタッチで音色を追求するのですが、オルガンの場合はタッチでの音色操作はできないので、そこが本当に大きな違いですね。
そして、あの巨大さ。教会の天井までそびえるパイプが圧倒的な存在感を放っています。指一本、何の力も加えなくても、ものすごい音量の響きが手に入るのです。もちろん、楽器をコントロールして音量を小さくすることも可能です。でもそれはピアノのように指によるタッチではないのですね。
ストラヴィンスキーが、オルガンのことを「息のしない巨大な怪獣」とよんで酷評し、オルガンの入った曲を一曲も作らなかったというのは有名です。そういいたくなる気持ちも分からないではありません。
そうはいっても、ピアノとはまったく違った趣のオルガンの演奏は、大変さはありましたが、とても楽しいものでした。
2011年9月17日、合唱団コール・リバティストにマエストロをお招きしての練習を行いました。
宗教曲の演奏では、オルガンのように声を出すとよい、と教えていただきました。
要は、声の立ち上がりなんですね。
一般的に、意識しないと声は立ち上がりがあまりよくありません。
ふわ~っとしたイメージよりは、まるでスイッチをおすように音が立ち上がり、音程が合っている。そんな感覚です。
具体的には、音程をしっかり決めてから、声門閉鎖とも言われる、声帯をピタリと閉じる準備を行い発声するとよいでしょう。
まるで天使たちが歌っているように見える宗教曲。私たちの見えないところでは、いろいろな工夫や努力が必要なんですね。
この日の稽古では、中田喜直の「都会」より2曲「ふりむくな」3曲「若者たちよ」4曲「子守唄」5曲「都会」、ブストの宗教曲「O magnum mysterium」「アベマリア」「Pater noster」、林光編曲の「中国地方の子守歌」「曼珠沙華」を歌いました。
「都会」は通せるようになりたいですね。体力をつけることも大事です。
宗教曲は、やはり正確さ。これから譜面を良く見直すこともしていかなくてはなあ、と思いました。
良い演奏を皆さんに聴いていただきたいですね。