変拍子は細かくゆっくり
作曲家の中田喜直は、「小さい秋みつけた」や「夏の思い出」などを作曲したことでも有名です。
しかし、極限まで研ぎ澄まされた感性で書かれた、本格的な合唱曲や歌曲などのシリアスな作品を知ると、中田喜直の本当に言いたかったことはこちらの世界にあったのではないかと思わずにはいられません。
2011年8月13日合唱団コール・リバティストに、プロ合唱団、東京混声合唱団のテノール志村先生をお招きしての練習を行いました。
この日は、中田喜直の組曲「都会」より最終曲の第五曲「都会」と、第二曲「ふりむくな」を歌いました。
「都会」は、第一曲「星」の、歌詞とテーマの旋律が同じになっています。音自体は、一見簡単に見えますが、変拍子と調性の変化が頻繁にあるし、思ったより歌いにくいかもしれません。
変拍子といっても、8分の5ですので、慣れればそんなに難しくはないのですが、4分の3と8分の9が交互に出てくるので、切換えを早くすることが必要です。
今回の5拍子は、基本的に「12123」と数えます。
ありがちなのは「12123ウン」と最後に1拍待ってしまうケースです。変拍子になれていないと、5拍で次に進むときに不安定に感じてしまうようです。安定を求めて6拍分勘定したくなるのですね。
慣れるために、歌詞をリズムで歌えるようにしてから音をつけていくようにするとスムーズだと思います。
5拍子は、聴き覚えで、雰囲気で歌ってしまうと、本番の舞台で必ず前のめりになります。のめりだすと、もう坂を転げ落ちるように速くなっていきますから恐ろしいことになってしまいます。変拍子はリズムが勝った作品が多いですが、ぜひ「良く良く歌い込んで」演奏してください。
変拍子は指揮者にとっても怖いもので、指揮者のY先生は、怒涛の変拍子作品ストラヴィンスキー「春の祭典」を振るとき、本番数日前から眠れなくなってしまったそうです。
「兄弟子の岩城さんや小林さんたちみんな暗譜だから、暗譜で振ることにした。でもすごいプレッシャーで、練習中に暗譜を忘れてしまうんだ。師匠に”よく寝なさいね”と言われて寝たら音を思い出したよ。でも、岩城さんも変拍子のところで止まったことがあるし、本当に怖い曲だ。」
そういうわけで、プレッシャーをかけるわけではありませんが、パート練習をぜひお勧めします。
様々な速さに変えて、どんな速さでも対応できるようにしておくと良いでしょう。
特に、細かくかぞえながら「ものすごくゆっくり」演奏する練習を多くしてください。
私は、8分の5の場合、メトロノームを使用し16分音符で10拍分勘定するようにしています。効果がありますからやってみてください。
この日は他に「ふりむくな」も練習しました。
「ふりむくな」と歌う5連音符が男声に多く登場し、なかなかはまりません。慌てすぎて「バラバラ」になってしまいます。
こちらは出来る限り1拍の中にびっちりおさめるように。思ったよりゆっくりで大丈夫です。
5連音符のあと次の拍の頭で「ポン」と言うとはまっていきます。
「ふりむくなポン」と練習してみてくださいね。
変拍子や、5連音符などは、感覚に頼り過ぎないように。
最後の本番では、いかにも「ノリノリ」で「感覚だけでやってます」という雰囲気を出せればいいのですから。