オペラのヒロインはなぜ合唱団に入団しないのか
音大の声楽出身の友人がある有名プロ合唱団のオーディションを受けることになり、伴奏者として同行したことがあります。
とても上手な人なのですが、結果は残念ながら落選してしまいました。
オーディションは、時の運みたいなものがあり、例えばソプラノが一人しか募集していないところで、たまたまたくさんの人が応募してしまうと、倍率が上がってしまい激戦となってしまいます。逆に、2人募集のところで5人しか来なかったりすれば、運良く入りやすいという状況になります。そのときは、彼女の受けたパートの応募が多かったので、仕方がなかったかな、とも思っています。
「声質が合わなかったのかな~」とさかんに悩んでいましたが、審査内容を聞くことができなかったので、本当のところはわかりません。
上手であることは大前提なのですが、声質が向いているかどうか、というのも大事な要素の一つだと思います。
オペラのソリスト向きの声、アンサンブル向きの声、というのは確かにあるのですね。
ソリスト用に作曲されたオペラのアリアなどは、わざわざ難易度を高くして、聴衆に対して「私はここまで出来るんですよ」ということをアピールしやすいように作られています。そのため、小さい頃から専門的な勉強を始め、修練を積んだ人がソリストとなる場合が多く、「私を見て。私を聴いて。」という気持ちが強いのがソリストの特徴。そして一人で全体を引っ張っていくエネルギーが必要です。
しかし合唱に向いているアンサンブル・タイプの場合は、声の派手さよりは、他人と協調し声を溶け込ませる要素が必要です。
プロの合唱団は、曲によってはソロも担当しなければならないので、皆さんソリストの声もきちんと持っています。ハモリ(合唱でハーモニーすること)やすい声と、ソロの声を上手にギアチェンジして歌っているのです。
ソリスト・タイプが合唱をする場合、磨きぬかれた華やかな声を調節して歌わなければならず、そのためソリストを目指す人は合唱はあまりやりたがらないことが多いような気がします。
だからといって、ソリストが優秀で、アンサンブルがそこから漏れた人たち、ということでは決してありません。
人とアンサンブルする、ハモる、ということは、これまた違った能力で、一流のソリストが一流の合唱ができるかどうかというのは別なのです。
もし、ソリストの要素をほとんど必要としないならば、アマチュアでも良い合唱はできると思います。
一番大事なところはアンサンブル能力があるかです。人の音を聴き、協調性があるかどうか。自立しながらも目立ってはいけないのです。
もちろん下手で良いわけがなく、日頃のトレーニングを怠ってはいけませんが、複数の人数が集まればお互いに足りないところを補い合って協力することで、人に感動してもらえるような演奏ができると考えます。
舞台に立って、人に喜んでもらえるような演奏をしたいと思っても、これからピアノやヴァイオリンをやって一人で舞台に立つことは難しい。
でも合唱なら出来ます。
ぜひ、チャレンジしてみてください。