バイオリンは子供用のサイズがあるのに、ピアノにはなぜないのか
作曲家の中田喜直さんは「夏の思い出」や「小さい秋みつけた」などの有名曲を作曲した人として有名ですね。
中田さんはピアノ科出身の人でした。
そのため、合唱や歌曲ではピアノパートが大変充実しています。
一般的にほとんど知られていないのですが、女声のための組曲に「魚とオレンジ」という作品があります。これは世界的に評価されてもおかしくないほどの傑作で、特に感覚的なピアノ伴奏が素晴らしい曲です。
中田さんは小柄であったし、手が小さかったことからピアノを弾くのに苦労していたそうです。そのため、ピアノを習う子供たちのために鍵盤を細くすることを提唱していました。実際に細い鍵盤のピアノを作らせて自分の作曲にも使っていたといいます。
確かに、中田さんのピアノ伴奏は、広い音程をとる技術が多く、既製のピアノだと手の小さい人にはちょっと厳しいところもあるのですが、特殊なピアノを使って作曲をしていたようですね。
バイオリンは子供のサイズがあり、成長に合わせてサイズを少しずつ大きくしていき、最後は大人のサイズ(普通サイズ)になるのですが、ピアノにはそれがありません。
小さくて柔らかい子供の手で、あの大きな鍵盤をおさえるのはなかなか困難を極めます。
だから、その子の音楽性よりも、もともと身体の大きい子や、成長の早い子、手がしっかりしている子のほうが有利になってしまうことも多いことは確かです。
子供の頃、私と一緒に習っていた同じ年の友だちは、身体が小さすぎることから向かないとピアノの道を諦めた人がいました。いまだに残念なことだなあ、と思っています。
だから、ピアノにも子供用のサイズがあれば良い、という考えはもっともなことだと思います。
しかし、子供用のバイオリンはあるのに、子供用のピアノは依然普及していないのです。
バイオリンの場合、サイズ交換のときは先生を仲介して、自分より年下のお弟子さんに譲っていくことをしています。小さくて軽い楽器なので、気軽に持ち運んでお譲りできるんですよね。
その点、ピアノのように専業の運送屋さんをお願いして移動しなければならないような楽器だと、気軽にお譲りするというふうにはなりにくいですね。
サイズの小さいピアノができれば、もう少し子供たちも練習しやすくなるのではと思うのですが、やはり難しいようです。
しかし、もう少し子供たちにも気楽にピアノを弾いてもらいたいですよね。
「プロになる、ならない」ということは抜きにして、バイオリンと同じく、子供のときにしかできないことが多い楽器だからこそ、やはり子供に合わせた楽器というのが必要ではないかと思えます。